長く険しい道のり...

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日本マクドナルドホールディングス(HD)の2014年12月期の連結業績予想が、最終(当期)損益で170億円の赤字(前期は51億円の黒字)に転落する見通しになった。2014年10月7日発表した。

仕入れ先だった中国の食品加工会社が期限切れの鶏肉を使用していた問題が7月に発覚、客離れが止まらなかったのが最大の要因だ。ファーストフード業界はコンビニエンスストアの猛追という厳しい環境にさらされており、マクドナルドの巻き返しは一筋縄ではいかない状況だ。

ファミリー客を再び店頭に戻すのは容易ではない

「再建は長く、粘り強い仕事になる」――。東京都内で7日、記者会見したサラ・カサノバ社長は終始、険しい表情を崩さなかった。

2014年12月期の連結売上高予想は、前年同期比15.1%減の2210億円と2ケタの減収、連結営業損益は94億円の赤字(前期は115億円の黒字)に陥る見通しで、2001年の上場以来初の営業赤字転落という厳しい内容だ。

日本マクドナルドHDにとって歴史的ともいえる業績悪化を招いた直接の理由は、中国での期限切れ鶏肉使用問題だ。7月の問題発覚以降、客離れは続き、7月の既存店売上高は前年同月比17.4%減、8月は25.1%減、9月も16.6%減と低迷が続いている。マクドナルドの顧客の約35%はファミリー客という。特に子供を抱える父母らが同社の安全性に不安を抱き、「子供に食べさせたくない」との思いで客足が遠のいたことが大きい。

マクドナルドは、鶏肉問題の発覚後、人気の「チキンマックナゲット」をはじめ中国製の鶏肉商品の販売をすべて中止し、タイ製に切り替えた。しかし、一度不安を抱いたファミリー客を再び店頭に戻すのは容易ではない。マクドナルドは、材料を仕入れている企業への抜き打ち査察を始めたり、食品衛生の専門家を集めて安全指針を作成したりして、信頼回復を図ろうと必死だが、顧客回帰の足取りは重い。

コンビニより魅力あるとはいえない

さらに顧客離れを招いている深刻な要因が、コンビニ業界との競争激化だ。コンビニ各社は元々、おにぎりや弁当などに力を入れていたが、ここにきてプライベートブランド(PB)戦略を強化し、総菜をはじめサンドイッチなど手軽に食べられる商品の品揃えや質の向上を図っている。この結果、競合するファーストフード各社から客を奪っているのが実態だ。セブン-イレブン・ジャパンなどで好調な「いれたてコーヒー」はその象徴ともいえ、コンビニ各社はあらゆる工夫で異業種からの顧客奪取につなげている。

これに対し、マクドナルドは商品のバリエーションが限定的という印象がぬぐえない。「同じファーストフード産業として見れば、品揃えも含めて、マクドナルドがコンビニより魅力あるとはいえない」(外食関係者)との声も聞こえる。いかに競争力ある商品やサービスを提供できるか。信頼回復と並び、マクドナルドの顧客獲得のための課題は重い。