公明党公式サイトより

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 野党・民主党がすっかり弱体化したせいか、最近、与党・公明党に対するリベラル派の評価、期待感が高まってきているような気がする。

 例えば、公明党の平和主義を評価する佐藤優『創価学会と平和主義』(朝日新書)は、現在の政治体制でなぜ公明党の存在感が増してきたかを記す一冊。安倍首相を皮肉りつつ、集団的自衛権の議論をこう総括する。

「一国の首相が心の問題を持ち込んだ」「心の問題を公共圏に持ち出すことは禁じ手だ。公共圏で交わされるべきは合理的な議論なのだ」「理性の言葉で集団的自衛権に反対しても、安倍首相には届かない」。

 ここで唯一存在感を放ったのが公明党。公明党が最終的に集団的自衛権の閣議決定に参加したことに平和の党としての責務を問う声もあったが、佐藤氏は、もしも連立を離脱してまできれいな平和論を主張していたら公明党の平和主義は本物ではなかったとし、「平和の党の看板に傷がついても、現実に戦争を阻止し、平和を維持することが重要なのである。少なくとも現時点で公明党はその機能を果たしている」と評価する。

 一方で、潮出版社から『アは「愛国」のア』を出した森達也氏は同書の中で、公明党支持者の雑誌編集者と議論しつつ、そうはいっても公明党が最終的に集団的自衛権の行使を認めてしまったことは、安倍政権の暴走をギリギリ押しとどめてしまったということでもある、と指摘する。

 確かに、集団的自衛権の行使容認の閣議決定文に「明白な危険」を追記させたのは公明党だ。当初、「我が国の存立が脅かされ、国民の生命、自由及び幸福追求の権利が根底から覆されるおそれがあること」という、余白を残しまくって後々で自由に解釈しちゃおうと企む文言だったが、この文言の企みを危惧した公明党が「根底から覆される明白な危険があること」と変えさせた。「おそれ」と「明白な危険」は黄信号と赤信号ほどの違いがあり、「これはもう限りなく赤に近い黄色でしょ」と危うい方向に持っていきたがる現政権に対する牽制としては、適確なものだったとは思う。もしかしたら安倍政権の暴走を止められるのは公明党かと、彼らのガードを期待するようになったわけだ。

 その期待感を汲み取っている公明党は、例えば、高市早苗総務相が靖国参拝の意向を示せば、山口那津男代表が「外交的な課題をつくるのは避けるべき」としたし、小渕優子経済産業相の政治資金問題が浮上すれば、漆原良夫中央幹事会長が「積極的な説明責任を果たすべき」としたし、アベノミクスの合法ドラッグ的存在であるカジノ構想については太田昭宏国土交通相が「議論が成熟していない」、井上義久幹事長が「ギャンブルに頼らない活性化策を」と慎重論を出してくる。

 政府の暴走や怠慢への対応をひとまず公明党の冷静さに頼ってみるという形が続いているが、彼らの目的意識を再認識しておく必要がある。間もなく結党50年を迎える記念特集号「潮」(2014年11月号/潮出版社)を開いてみれば、公明党および創価学会の意図は当然ながら変わっていない。

 劇作家・評論家の山崎正和氏と対談した山口那津男代表は、公明党が連立与党に参加する意味を「自らの主張を自らの手で実現できること、つまり政権の力を生かして公明党の政策を実現できること」と言い切り、「全国3000人の議員ネットワークを駆使して民意を吸収する力は他党を圧倒している」と高らかに宣言する。公明党のメリットはそのまま国民のメリットである、とも強調する山口代表の論理は外野から見ればいささか強引だし、「自らの主張を実現させる」と本音を漏らした後で、自民党を暴走させない役務を公明党にお任せください、とする論旨には、ことさら違和感を覚える。

 政権のブレーキ役で評価を上げることができていると踏めば、支持母体・創価学会との距離感をどう見せるべきか、プレゼン方法も変わってくる。たとえば「潮」の対談では、山口代表は自分からは「創価学会」という言葉を使わずに、ネットワークを使って自分たちの主張を実現させたいとした。でも、ネットワークってつまるところ、党ではなくて母体のこと。要するに公明党は、政権に対するブレーキとアクセルは持ってはいるものの、ハンドルは支持母体に握られたまま。ならばこちらは「自らの主張を自らの手で実現できる」に翻弄される懸念を意識的に持っておきたい。

 しかし、山口代表にはそんな懸念はまったく届いていないようで、「(集団的自衛権容認を)むしろ諸外国のメディアのほうが、今回の閣議決定の意義を冷静に見てくれています」と胸をはる。

 本当だろうか。「諸外国のメディア」について、胸をはった山口代表から具体的な例示はない。ならばこちらで拾い上げてみるが、ロイター通信は「戦後の日本の安全保障政策において歴史的な変化になる」、独紙フランクフルター・アルゲマイネは「戦争の記憶のある中高年らに不安を抱かせている」、ニューヨーク・タイムズ紙は「アジアにおける心配の種を増やした」と、"冷静に"懸念を表明している。

 そもそも、集団的自衛権を容認したのも、飯島勲内閣官房参与に「政教分離」を考え直すよと脅されたからじゃ......。

 だが、リベラル派の公明党に対する期待感は高まる一方だ。対談相手の山崎氏が言う。

「今の公明党は創価学会の支持だけでなく、『無党派層』と言われる有権者の票もたくさん集めています。無党派層の支持にも支えられ、公明党は日本の右傾化にブレーキをかける役割も果たしてきました」

 無党派層が実際に投票しているかははなはだ怪しいが、毎度お馴染み、選挙の際の「○○さんに入れてくださいね」という電話攻撃に替わる新たなプロモーションとして「右傾化にブレーキをかける党」アピールが出てきている。

 確かに、公明党は現政権の歯止め役ではある。しかし、そこに旧来の目的がじんわり染み込んでいるのも事実。そして、秘密保護法然り、集団的自衛権然り、なんだかんだで安倍政権の暴走を許容し続けている。風紀委員を買って出ているが、結局、学級委員の意向には逆らえない優等生だ。これが党のブランディングとして正しいとの読みなのだろう。ならば、やっぱり、その政党を「頼みの綱」にするのは危険だ。
(武田砂鉄)