知中論

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「現代の日本で最も嫌われている国はどこでしょうか。それは中国です」。

中国事情に詳しいノンフィクションライター、安田峰俊氏の「知中論」(星海者新書、税別840円)はこのような書き出しで始まる。尖閣諸島問題や反日デモで「悪い国」のイメージが付いてしまった国。だが見方を変えれば、中国特有の事情があるのではないか。本書では「ありのままの中国」に迫っている。

反日デモと孫悟空の間に関係が...

「尖閣諸島は誰のものか」。

「反日デモは今後も起きるのか」。

「習近平は何者なのか」。

近年すっかり冷え込んだ日中関係を考えたとき、真っ先に浮かびそうな疑問が本書では取り上げられている。諸問題について本質的にどのような背景があるのかを解説しているが、そのアプローチが面白い。例えば筆者は、数年単位で発生する反日デモは今後も起きると断言するが、その底流には日本でも親しまれている「三国志」の英雄、張飛や「西遊記」の孫悟空を「源流」とする、中国民衆の思想的文化が横たわっているのだとする。

中国の最高指導者、習近平国家主席の日本での評判は「最悪」と言っていい。尖閣問題をはじめ日本に強硬手段をとるだけでなく、中国の少数民族の弾圧も指摘されている。ところが、国内では「庶民ウケが意外に良好」という面を持つそうだ。「コワモテリーダー」の印象の習主席が、「民に親しまれる指導者」を演じているというのだが、その理由についても述べられている。

また中国人との議論の中で、尖閣問題は日本人の主張を理解してもらえる部分がある半面、靖国問題については全く受け入れてもらえなかったという筆者の体験談が紹介されている。これはなぜなのか。

歴史を振り返ると、日本は時に中国に「過剰な期待」を寄せ、その時期が過ぎると中国に対する失望と蔑視をぶつけたと指摘する。だが中国では、現地の人たちが「普通の暮らし」を営んでいる事実がある。こうした面を受け止めながら、中国に対する勝手な理想を抱かず、極度に嫌悪感も持たず、リアルな中国を見つめてその付き合い方を考える必要がありそうだ。