グレース・オブ・モナコ

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2014年の流行語大賞におそらくノミネートされる「ありのままで」。ディズニー映画『アナと雪の女王』でエルザ・松たか子さんが歌う主題歌『レット・イット・ゴー〜ありのままで〜』のサビの歌詞だ。 ストレス過多な時代、OLも主婦も「♪ありのままで〜」とうたって、いっときの憂さ晴らし。しかし実際のところ、現実の社会、とくに伝統・格式を重んじる王室、皇室で「ありのまま」でいられるのか? 今回は「お姫様」「プリンセス」をキーワードに3冊をピックアップ。

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グレース・ケリーは女優でなくモナコ公妃を演じることを選んだ

14年10月18日から映画『グレース・オブ・モナコ 公妃の切り札』が公開されている。米ハリウッドのスターでオスカー女優のグレース・ケリーが仏カンヌ映画祭でモナコ公国のレーニエ大公と恋に落ち結ばれ同国王妃へというシンデレラスストーリーは、まさにおとぎ話のような真実。しかし、世のお約束通り、スイートでロマンチックでばかりではいられなかった...。

映画では彼女がアルフレッド・ヒッチコック監督から映画『マーニー』の主演を打診され女優復帰を一度は決意するも、宮廷内からその秘密が外に漏れて...ということからはじまり、宮廷内の陰謀、その黒幕が暴かれるというところまでが描かれている。女優と決別して、妻を、母を、そしてモナコ公妃を「演じる」覚悟を決めるという内容だ。

『グレース・オブ・モナコ』(著・ジェフリー・ロビンソン、訳・藤沢ゆき、小松美都、KADOKAWA、950円)は、この映画の原作本。グレース本人とも深い交流のあったジャーナリストが、近しい人々の多くの証言も交えて描く、硬派で華麗なノンフィクション。

ブータン王妃が紹介する幸せの国の真実

ブータンといえば平和でのどかで温かい、しあわせなイメージを抱いてしまうが、1952年、最高権威化身高僧が当時の国王に暗殺されるという歴史があるように、この国にもやはり陰謀とか、どろどろしたものがあったようだ。しかし、暗殺された高僧の家系に生まれた本書の著者であるドルジェ・ワンモ・ワンチェックが、暗殺者の孫にあたる第4代国王と結ばれ、「和解」があり、そして今や世界中が、ほんとうの豊かさとは何かと注目するようになった「国民総幸福」へとつながっていく。

『幸福大国ブータン―王妃が語る桃源郷の素顔』(著・ドルジェ・ワンモ ワンチュック、訳・今枝由郎、日本放送出版協会、2268円)は、ブータン王妃、(国王は譲位により5代目になっているので正確には元王妃)が、ブータンの歴史や自然、宗教、民族、風習などを、自らのおいたちと絡めながら語るもの。淡々とした語り口の中に、王妃の人柄やさしさがにじみ出て、あたたかな気持ちになれる。観光ガイドブックではないが、ブータンに行ってみたくなる本。

傘寿を迎えられた皇后の短歌・長歌を編んだ書

『皇后美智子さまのうた』(著・安野光雅、朝日新聞出版、1944円)は、2014年1月から3月にかけて『週刊朝日』に連載されたものをまとめたもの。まさにタイトル通り、皇后美智子さまがこれまでに詠まれた歌の中から、短歌90首と長歌1首を選び、画家の安野光雅氏が挿絵と解説を付している。たとえば本書の最初に登場する歌でアフガニスタンの湖を詠まれた「果の地の白砂のさなか空の青落ちしがに光る湖ありき」、あるいは、ご成婚の年に詠まれた「てのひらに君のせましし桑の実のその一粒に重みのありて」などから、皇后陛下の優れた感性、気品ややさしさを汲みとることができる。

民間人としてはじめて皇室に嫁がれ辛いことも多々おありだったと想像に難くないが、詠まれるうたは、「ありのままで」と自分をおしつける気負いさもなく自然体。

勢いで一気呵成に読んでしまうもの、あるはパラパラと斜め読みでも充分な本とは違い、佇まいをととのえて本書と丁寧に向き合えば、日本という国の良さを感じることができる。