信長協奏曲 ドラマ放送記念スペシャル版 (少年サンデーコミックススペシャル ゲッサン)
小学館
単行本2.5巻分が一冊にまとまって500円のお得版。

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月9、はじめての時代劇「信長協奏曲」(フジテレビ、月曜21時〜)。小学館「ゲッサン」(石井あゆみ)で連載中の人気漫画を原作にした新ドラマは、10月13日放送の第1話で初回視聴率15.8%(ビデオリサーチ調べ、関東地区)と、出だし好調だ。

2014年の現代に生きている高校生・サブロー(小栗旬)が、戦国時代にタイムスリップ、織田信長(小栗2役)になり代わって生きていくというストーリーの概要はわかりやすく、出演者は、小栗旬、柴咲コウ、向井理、山田孝之、高(=正式にははしごだか)島政宏と華やか。
さらに、家紋をヴィトンの村上隆モデルのようにあしらった宣伝ビジュアルやドラマの中に出て来るカラフルなのぼり旗などの美術などをはじめとしたポップなパッケージ感によって、いわゆる時代劇の重さや暗さが排除され、カジュアルダウンした見やすいものになっていた。

また、月9・イコール・ラブストーリーとは限らないとはいえ、やっぱりラブストーリーブランドの印象が強い枠。その期待を外さない、小栗と柴咲のツンデレラブも手厚く描かれていたことも功を奏したか。

そうはいっても、戦国もの。表面的にはポップだが、描かれていることはかなりヘヴィー。そこは、麿赤兒や西田敏行、でんでんなどが重厚な存在感で締め、カンヌ映画祭で賞もとった俳優・柳楽優弥も迫真の演技を見せた。

戦国武将たちの野望渦巻く中、いきなり闘いに次ぐ闘い、死に次ぐ死で、「弱き者は死んでいく」(柴咲演じる信長の妻・帰蝶の台詞)という戦国時代の命の価値観に疑問を感じた現代人サブローが、家臣であり乳兄弟の恒興(向井理)に「死ぬな! 頼むから死ぬな! 命令だ!」と言い放ち、現代人の価値観を持ち込んでいこうとするところまで、第1話は1時間30分の拡大版ながら、テンポよくスピーディーに進んだ。

脚本は、『TIGAR&BUNNY』『怪物くん』『妖怪人間ベム』などヒットメーカーの西田征史。笑い、シリアス、緩急を巧みにつけながら、その中にメッセージ性を盛り込み、最終的なカタルシスにもっていくテクニックはかなりのもの。

アクション部分を担当するのは、三池崇史監督作に多く参加し、小栗とは「クローズZERO」シリーズで仕事をしている辻井啓司。派手なアクションがいまだに記憶に鮮明に残る「十三人の刺客」も手がけている辻井によるガチな肉弾戦も、テレビ時代劇の印象を変える。

リアルな戦を目の当たりにした小栗信長(サブロー)
は、「つらいわー、戦国。俺、甘かったみたい。なんとかなるだろうで生きていられたのは現代だったからなんだな」なんて、空を見上げながら、今後のことを考えて、たそがれる。
状況に対するナイーブな反応は小栗旬の得意技で、困惑の感情が視聴者の心にすっと入ってくる。
1982年生まれの31歳(12月に32歳)。さすがに高校生役無理では? という心配は無用。かなりハマっていた。

小栗が視聴者の目の代表として、今までのやり方が通用しない、しかも油断したらすぐ死が待っているヘヴィーな戦国時代を旅し、そこから何が見えていくのか。

ホンモノの織田信長の今後も気になるところ。なにしろ、いきなり第1話のラストで、信長の今後の生き方の選択が明かされる。ってことは、いわゆる信長の最期はどうなるのか? と興味を引いた。
原作もまだ連載中なので、ドラマの終わりはどうするのだろう? 以前放送されていたアニメ版は、かなり途中で終わっていたが。

ドラマの第1話は、原作と少し変えてあったので、ドラマの独自の展開も期待したい。
そして、このドラマオリジナルの部分が、月9の時代劇という新たな挑戦において、現代劇と時代劇を繋ぐ効果的なアイテムになっている。

冒頭、サブローがタイムスリップする場面は、原作では、サブローが歴史の授業を受けているところからはじまる。
ドラマでは、時代村に修学旅行に来ていて、女の子に告白して振られたところからはじまる。しかも、決定的な言葉を聞かずに逃げて、振られてないと言い張るヘタレとしてサブローは描かれている。

電話がかかってきたフリして、女子の言葉を遮るサブロー。その逃げに使われたケータイが、戦国時代と現代をつなぐアイテムとして活きる。
見知らぬ場所にひとりになった不安からケータイをかけようとするが、当然、圏外。でも、電池は生きているので、サブローはバシバシ写真を撮る。その姿を見て、恒興は「硯をもって踊っている」と思う。
さながら、もしも、現代人が戦国時代にタイムスリップしたら? というシチュエーションコントだ。これは、お笑いもやっていた西田ならではの視点だろう。

ほかに、サブローは戦場でスニーカーを履いている。
第1話のサブタイトルは「高校生が戦国へ!?  スニーカーで生き延びろ!! 戦国で見つける青春、友情、どきどき、恋」とスニーカーが強調されている。
パーカーも着たままだ。ちなみにこのパーカーのロゴは「DAMMY」。「DUMMY」だったら「代用品」だったのに、惜しい!?

パーカーの下に、スカートみたいに着物をレイヤードして、裾をひらひらさせている小栗旬の着こなしも面白い(こういう着こなしのうまさも小栗ならでは)。
肉体美サービスなのか、ふんどし姿も出てきたが、下着もやっぱりすぐには切り替えられないようで、赤いトランクスを履いているらしきカットもあった(赤いふんどしではないと思うのだが)。

冒頭に出てきた時代劇村のニセモノ感からはじまって、現代人が戦国時代にいるニセモノ感は、逆に、時代劇に興味のない人も逃さない。
この頑張りが報われ続くよう、第2話にも期待している。(木俣冬)