『アイドル国富論: 聖子・明菜の時代からAKB・ももクロ時代までを解く』境 真良 東洋経済新報社

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「年収ウン千万になるとは思えないけれど、自分の幸せを自分の手でつかみ取るために、本当は楽に生きたい気持ちをこらえながら、泣きながら頑張る」人。

「格差の時代とも言われるグローバル市場経済の時代に、大きな夢を見ることなしに、それでも目の前の手の届く挑戦を諦めずに続けようとしている」人。 

 一瞬、自分のことだと思ってしまった方もいるのではないでしょうか。

 書籍『アイドル国富論』の著者・境真良さんは、このような人たちのことを「ヘタレマッチョ」と呼びます。そして、この「ヘタレマッチョ」たちの精神的サポートとなるのが、AKB、ハロプロをはじめとする、多くのアイドルたちの存在なのだと指摘します。

 ヘタレマッチョとアイドルとの関係。

 一体どういうことなのでしょうか。境さんは、ヘタレマッチョたちのカンフル剤としてのアイドルたちという視点について、次のように説明します。

「萎えてしまいそうな心には、現代アイドルたちが歌う応援歌や、現代アイドルたちが全身で頑張る姿勢がカンフル剤です。そして、孤独な気持ちには、ネットやライブで確認し合えるファンコミュニティの仲間たちがいます。(中略)さらに無力感を感じた時には、自分が推すことによって、グループや推しメンがアイドル界や芸能界の中で上昇していく(時には転落もしますが)ドラマツルギーの中で、自分の主体的な力を確認することができます」

「日本のグローバル市場主義の精神インフラ」としての、現代のアイドルたち。こうした現代アイドルには、ヘタレマッチョたちのニーズにこたえるべく、「闘うアイドル」としてのAKB、「励ますアイドル」としてのももクロ、「究めるアイドル」としてのモーニング娘。といったように、様々なアイドルの形があるのだと言います。

「『闘うアイドル』AKB48は、そのメタドラマツルギー戦略の中でファンのために、そしてファンと共に闘ってみせます。闘いの嚆矢たるAKB総選挙で一人複数枚の投票が許されていることすら市場経済の縮図です。彼女たちと一緒に闘ううちに、ファンは自分もまた闘える勇気を受け取ります」

 今の日本で何故アイドルがこれ程までに隆盛をみせるのでしょうか。その背景には、日本の経済とその中で必死に生きる、多くのヘタレマッチョたちの存在があるのです。本書は、アイドルから経済を、経済からアイドルを読み解く意欲作となっています。