トヨタ自動車が、ここへ来て「究極のエコカー」、燃料電池自動車(FCV)の生産、販売を一気に加速させつつある。

「対外的には一切公表していませんが、当初は2014年度中に日本国内で700台の販売を予定していたところ、予約注文が相次いだため、2100台に引き上げるべく現在調整中です」(トヨタ自動車役員)

 こうしたコメントを聞く限り、トヨタのFCVプロジェクトは順調な滑り出しとなったと見ていいだろう。最大の要因は、販売予定価格が当初想定されていたよりも安く設定されたからに他ならない。

「700万円という価格設定は、想像していたよりもはるかに安い。加えてこのFCVに対しては、国や自治体(愛知県)が補助金を支給する方向で調整している。もし仮に補助金が実現したならば、その価格はトヨタの高級車、クラウンを下回ることになる」

 既に注文をした愛知県在住のトヨタ車ユーザーがこう指摘する。

 この補助金制度については、安倍首相がわざわざ言及していて、「1台あたり200万円の補助をしていく」との方針を示している。

「こうしたことからも明らかなように、FCVの普及は国策として進めていくということ」(前述のトヨタ自動車役員)

 とは言えFCVの普及を進めていく上で、最大のネックとなるのは、やはり何と言ってもFCVの燃料、水素を供給するための水素ステーションの数が圧倒的に不足していることだろう。

「トヨタの御膝下である愛知県ですら、水素ステーションの数は10を下回っている。FCVが納入されても、当面は遠出は無理ですね」(前述のトヨタ車ユーザー)

 爆発しやすい水素ガスは、極めてリスキーな気体だ。その取り扱いについては、万全の安全策を講じることが法的に求められている。

「しかしここ近年水素の取り扱い技術が向上していることを考えると、一連の規制は行き過ぎている。つまりそうした規制を緩和していかなければ設置は進んでいかないだろう」(経済産業省幹部)

 水素ステーションの設置に関して安倍首相は「全国に100か所以上の設置を進める」との目標を掲げるが、これも規制緩和しだいと言ったところだろう。

文■須田慎一郎(ジャーナリスト)

※SAPIO2014年11月号