今月4日に閉幕したアジア競技大会に続き、韓国仁川の地でアジアパラ競技大会が開催される。41か国から約4500人の選手が参加予定。18日に開会式が行なわれ、24日までの7日間、23競技で金メダルが争われる。

 今大会最大の注目は、9月の全米オープンで単複優勝を果たし、年間グランドスラムに輝いた車いすテニスの国枝慎吾(ユニクロ)が、いかにアジア勢を圧倒して優勝できるかだ。優勝すれば、リオ2016パラリンピック競技大会の内定第一号になる可能性が高い。本人も「アジアで負けるわけにはいかない。しっかりメダルを取って選手団に勢いをつけたい」と話し、自信をみなぎらせている。

 同じ車いすテニスでは、女子のトッププレーヤー上地結衣(エイベックス・グループ・ホールディングス)が今シーズン、初めてダブルス年間グランドスラムを達成するなど飛躍的に力を伸ばしている。世界ランキング1位の実績を見る限り、今大会のシングルスでも優勝を果たし、リオ切符を手にする確率は高い。

 さらに前回の広州大会同様に、メダルラッシュが期待されるのは、陸上競技、水泳、柔道だ。

 競技初日の19日に行なわれる陸上競技・走り幅跳(片大腿切断などのクラス)には、2013IPC陸上世界選手権の金メダリスト、山本篤(スズキ)が登場。今大会の金メダル第一号となるか注目される。山本はトラック種目も好調で、8月のIPC陸上グランプリファイナルの200メートルで優勝、9月のジャパンパラ陸上競技大会の100メートルで12秒61の日本新記録を樹立。今大会で100メートル、200メートル、走幅跳の3冠を狙う。

 義足の片下腿切断などのクラスでは、前回200メートル覇者の佐藤圭太(中京大学)が100メートルで金メダル獲得に挑む。今季調子を上げてきているハイジャンパー鈴木徹(プーマジャパン)の2メートル超えにも期待がかかる。国内の車いすカテゴリーをリードする樋口政幸(バリストライド)はトラック種目800m、1500m、5000mでアジアを制し、世界への道につなげたい。

 国立スポーツ科学センター(JISS)で直前合宿を行なった水泳は、2020年の東京パラリンピックを目指す10代選手の活躍が期待される。なかでも、日本選手団最年少の16歳、池愛理(東京成徳大高校)は、177センチの長身を生かしたダイナミックな泳ぎが持ち味だ。今大会は、100メートル自由形など6種目にエントリーしている。

 また、アテネ、北京、ロンドンと3度のパラリンピックに出場している山田拓朗(NTTドコモ)、全盲クラスの木村敬一(東京ガス)、知的障がいクラスのスイマーら、実績のある選手たちも上位争いに絡むだろう。

 前回大会で出場10選手中9選手がメダルを獲得した柔道は、ロンドンパラリンピック100キロ超級金メダリストの正木健人(エイベックス・グループ・ホールディングス)、73キロ級の高橋秀克(三功保険)らが出場し、今大会もメダル量産を目指す。

 その柔道に加え、アジア勢が強力な※ボッチャ、8月の世界選手権で視覚障がいタンデム(二人乗り自転車)でチャンピオンになった鹿沼由理恵(メットライフ生命保険)も出場する自転車などは、リオの国別出場枠獲得のためのポイントが与えられる重要な大会となる。
※重度の脳性まひ者もしくは四肢重度機能障がい者のためにヨーロッパで考案されたスポーツ。白い目標球に赤・青のボールを6球ずつ投げたり、転がしながら、いかに目標球へ近づけるかを競う。

 団体競技では、8月の世界選手権で4位となったウィルチェアーラグビーの金メダル獲得が期待される。東京パラリンピックに向けた強化を視野に、選手コーチともに若手中心のチーム編成となったが、アジア王者に輝くことはリオで悲願のメダルを獲得するための最低条件だ。

 ロンドンパラリンピック金メダルの※ゴールボール女子は、ライトの安達阿記子(リーフラス)を中心に強化に取り組んでいる攻撃力がどこまで通用するか。今大会では強者・中国から勝利をもぎ取り、来春のリオ最終予選に向けて弾みをつけたい。
※1チーム3名で戦う。目隠しを着用したプレイヤー同士が鈴入りのボールを転がすように投球し合う。自身のゴールを守りながら、一定時間内でより多くのゴールを決めたチームが勝利となる。

 前回大会で男女ともに金メダルに輝いた車椅子バスケットボールと、11月に東京開催の世界選手権を控える視覚障がい5人制サッカーは、地元・韓国や体格に勝るイランを相手に厳しい戦いが待っている。

 優勝すればリオの出場権が与えられる脳性麻痺7人制サッカー、シッティングバレー男女も苦戦が予想される。

 それでも、日本チームの持てる力を出し切り勝利を目指して欲しい。

 そのほか、つい先日のIPC(国際パラリンピック委員会)総会で2020東京パラリンピックの正式競技に採用されたばかりのバドミントン、パラリンピックでは見られない車いすダンスなどの競技にも注目したい。2020年に東京パラリンピックが開催されることが決まってから、夏季としては初めての総合競技大会になる。

 競技以外のことでは、選手村にスポーツ医・科学、情報面などの支援をするマルチサポートハウスが初めて設置される。

「2年後のリオはもちろん、6年後の東京への強化にしたい」とは、JPC(日本パラリンピック委員会)の強化委員長を務める大槻洋也団長。メダル数120個が今大会の目標だ。ライバルは、前回メダル数1位の中国、前回2位の日本と同数だった韓国だ。

 選手団主将の国枝が「アジアを制すことが、世界を制すステップになる」と語るとおり、それぞれの選手がアジアで確実に結果を残すことが、6年後に向けた好材料になる。アスリートたちの戦いぶりに注目して欲しい。

瀬長あすか●文 text by Senaga Asuka