現在生活保護を受給している著者・大和彩の『失職女子。〜私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』は、がけっぷちの状況に追い込まれた大和の実体験をつづった本だ。大和の身に起こったことは「自己責任」でもなければ「他人事」でもない。

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●一昨年、正社員の職をリストラに
●リストラ後、一生懸命に職を探すも、80社から連続不採用に
●休職期間は一年に及び、貯蓄を食いつぶす
●やっと採用された契約社員の仕事が三カ月で打ち切りに
●その仕事の失業保険がおりず、今月のお家賃・公共料金が払えません ←イマココ!

37歳女子。
怠けているわけでも、甘えているわけでもない。勤務態度が悪かったわけでもない。金遣いが荒かったわけでもない。
親からは虐待を受けていたため、頼ることはできないし、連絡がいくようなことは絶対に避けたい。
元々持っていた身体とメンタルの問題は、じわじわ悪くなることはあれどよくはならない。
現在の預金残高は一万円以下。

そんなとき、いったいどうする?
『失職女子。〜私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』は、著者の大和彩の実体験を書いた本だ。

がけっぷちの状況に追い込まれた大和の頭によぎった選択肢は3つ。

1.サラ金で借金
2.風俗で働く
3.富士の樹海

結論を言えば、大和はこのどれも選ばずにすんだ。区の福祉課で「総合支援資金貸付」の紹介を受けたのだ。これは、三カ月のあいだ、金利1.5%でお金を借りることができる支援の仕組み。親切な担当者・諸葛孔明子さん(仮名)に出会い、不安と緊張で意識が遠のきつつも、申請をすることができた。

〈私は本書を通して、読んでくださる方にお伝えしたいことがひとつだけあります。それはこういうことなんです。
 もしあなたがある日突然、無職になり、お家賃を払えなくなっても、そこで万事休す……さあ、富士の樹海にレッツゴー! と死に急がなくてもいい方法がひょっとしたらあるかもしれない、ということです〉

なんとか当月の家賃を払うことができた大和。しかし、大家から「あと数カ月でちょうど契約の更新だから出ていってほしい」と言われてしまう。引っ越し資金も、新居の初期費用も用意することもとてもできそうにない。

〈別にぜいたくがしたいわけじゃない。単に人さまに迷惑をかけないために、ただお家賃とライフラインにかかる費用をきちんと払いたいだけ。なのに、その最低の生活費すら稼げない。だったらもう、私、売春するしかないのかな〉

そんな考えもよぎる。しかし、結局は「売春しない」と決めた。その理由は倫理観ではない。

〈若くない、きれいじゃない、経験がない、加えてもともと愛嬌もサービス精神もない私が、若くてきれいで優秀な人材がどんどん流れ込んでいる、現代の風俗業界で勝負できるはずもありません。お金を稼いで貧困から抜け出すのが目的である以上、売れないなら、私には売春する意味がないのです〉

大和は、孔明子さんとともにハローワークに向かう。職員のハローワー子さん(仮名)に具体的なアドバイスを受け、適した求人を選んでもらいながら、正社員の仕事を探した。週3日のパートも始めた。

しかし、なかなか状況は好転しない。
あくまでも「総合支援資金貸付」は借金。不安に追われる中、体調はどんどん悪くなっていく。とうとう、主治医から「あまり勤務時間を増やさないほうがいい」と宣告されてしまう。

貧困に陥る人に対しての、「自己責任」「甘えている」「仕事を選んでいる」という言説がある(行政側の人でさえ、このような考えを持っている人が少なくない)。『失職女子。』を読むと、その批判があまりにも的外れなことがわかる。
きちんと自立して生活しようとしているのに、それが叶わない。ギリギリまで悩んだ末に、大和は「生活保護」を受給することを選んだ。

〈もう道はそれしかないとわかっているのに、それを認めたくない私は、いつまでもぐずぐずしていました〉
〈必要な人が公的な支援を受けるのはまったく問題ないと考えていても、いざ自分がその立場に立ってみると、ここまで迷うってなぜなんだろう〉

生活保護の申請と、それに伴う新居探し。ケースワーカーとの面談。虐待親に連絡が行くのではないかという激しい不安……。
それらを乗り越えて、現在、大和は生活保護を受給し、生活を立て直そうとしている。

『失職女子。』は、読んでいるとぞっとしてくる本だ。
私はフリーライターをやっているが、体調を崩してほとんど仕事ができなかった月があった。その2か月後、通帳に振り込まれた金額は合計で3万円。貯金はない。実家暮らしじゃなかったら、親に頼れなかったら……生活は確実に破たんしていた。「お金がない」という状況は、あまりにも簡単に訪れる。

大和のケースは、むしろ「福祉が機能した」と言えてしまうのが、またつらい。
『彼女たちの売春』や『最貧困女子』、『「福祉」が人を殺すとき』では、福祉の手が届かなかった(あるいは、訴えはあったのに、届けようとしなかった)ケースも数多く紹介されている。
目に見えずに消えていく人々の数はもっともっと多い……多い。

大和彩『失職女子。〜私がリストラされてから、生活保護を受給するまで』(WAVE出版)
「messy」連載コラム「失職女子。」

(青柳美帆子)