人口が減り続け高齢化が進む地方を活性化させる「地方創生」を、安倍晋三政権は重要課題の一つに掲げている。はたして、目論みどおりに地方は創生するのか、大前研一氏が解説する。

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 結論を先に言えば「地方は創生しない」。私はUCLA(カリフォルニア大学ロサンゼルス校)で「地域国家論」の講座を担当していて世界各国の事例を調査・研究しているが、世界中どこでも20世紀以降の課題はアーバニゼーション(都市化)であり、地方が創生した例はないのだ。

 振り返れば、日本は所得倍増計画を掲げた池田政権が1962年に第1次の「全国総合開発計画(全総)」を策定して以来、「国土の均衡ある発展」をスローガンに、1998年の第5次まで全総を継続した(2005年からは全総に代わる「国土形成計画」を策定)。

 だが、中央から地方にカネを注ぎ込んでうまくいったのは日本が中進国だった高度成長期だけで、その後は大半の地方が中央からの交付金や補助金に依存するようになり、自助努力をしなくなって衰退した。これは、自助努力をするための権限委譲が全く進んでいないのだから当たり前と言えば当たり前の帰結で、もはや地方創生は他の国よりもはるかに困難になっている、と思わねばならない。

 そもそも「国土の均衡ある発展」は、とっくに達成されている。私は今年だけでもレンタカーで九州を2回周遊し、北海道を800km縦断し、バイクで四国を1500km、長野〜富山間を640km走ってきた。どこも道路をはじめとする社会インフラは、クマとタヌキしか出ないような山の中までくまなく整備されていた。

 ところが、それらの地方に「自前の経済エンジンを作って稼ぐ」という発想はない。中央からのカネで食べさせてもらうことが、習い性になっているからだ。安倍首相が本当に地方を活性化させたいなら、“上から目線”ではなく、地方が真の意味で自立して食べていけるように、中央集権の統治機構を根本から造り替える必要があるのだが、その構造的問題を全く理解していないのである。

 自民党は“アンコール”の声がかかるたびに「日本列島改造」だの「ふるさと創生」だの「地域振興」だのと名前を変えて地方にカネをバラ撒いてきたわけだが、その効果が全くないことは、すでに歴史が証明している。にもかかわらず、安倍政権が「地方創生」を国策として大々的に打ち出したということは、結局、成長戦略のアイデアが尽きた証左にほかならない。

 このままでは日本経済は、構造的な変化に対処できずに倒れていく日本企業と同じ運命をたどることになるだろう。

※週刊ポスト2014年10月24日号