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大阪大学はこのほど、視覚や触覚などの感覚刺激によって分泌されるタンパク質が、発達期の脳神経ネットワーク形成に重要な役割を果たすことを発見したと発表した。

同研究成果は同大学大学院生命機能研究科細胞分子神経生物学研究グループの早野泰史 研究員(現所属:同大学医学系研究科研究員)、山本亘彦 教授らの共同研究グループによるもので、10月6日発刊(現地時間)の「米国科学アカデミー紀要(Proceedings of the National Academy of Sciences of the United States of America)」に掲載された。

発達期の子供の脳では、神経細胞(ニューロン)から成長した「軸索」という突起が、その末端で枝分かれして、複数のニューロンと結合することが知られている。この軸索分岐は神経回路の機能を左右する現象であり、この過程に異常が生じるとさまざまな機能障害を引き起こすと考えられている。しかし、軸索分岐をコントロールする分子機構についてはこれまでわかっていなかった。

同研究グループは、さまざまな研究方法を用いて「ネトリン4」と呼ばれるタンパク質が生後の大脳皮質で作られ、感覚情報を中継する「視床ニューロン」の軸索分岐を促進すること、その遺伝子が欠損したネズミの脳内では軸索分岐が減少していることを発見した。

さらに、「ネトリン4」の量は暗闇で飼育したネズミの大脳皮質では少なく、逆に光刺激を与えると増えることから、視覚などの環境入力によってその量が変化することが判明した。以上のことから、「ネトリン4」は生後発達期の環境に合わせてその量を変化させ、脳神経回路形成を調節していると結論付けられた。

環境要因が脳神経回路にどのように作用するのか、その具体的な分子メカニズムはこれまでほとんど明らかにされておらず、同研究グループは「今回の研究結果は遺伝的な要因だけでなく、幼少期において周囲の環境から適切な刺激を受けることが正常な脳発達に寄与することを分子レベルで証明するもの。子供の脳発達のメカニズムを理解するために重要であると共に、精神神経疾患における環境要因の理解に対しても光明をもたらすものとして期待される」とコメントしている。