『昭和天皇実録』が公表され、改めて昭和天皇とその時代がクローズアップされている。昭和天皇は、実際に国民とどのように接してこられたのか。日本サッカー協会顧問の釜本邦茂氏が秘話を明かす。

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 メキシコ五輪で銅メダルを獲得して帰国した後の1968年10月31日、入賞した選手団や監督らとともに皇居で昭和天皇にお目にかかりました。 その時、陛下は僕たちが首にかけていた銅メダルを覗き込み、「よく頑張られましたね」と言われました。

 若かった僕は畏れ多くてお顔を見ることができませんでしたが、直後に皇后陛下が「ずいぶん、お座布団が飛んでいましたね。大変だったでしょう」と仰ったことをよく覚えています。

 それは、地元メキシコを相手にした五輪3位決定戦の出来事でした。日本がリードしていた後半40分過ぎ、メキシコがシュートを外すと緑と赤の無数の座布団がスタンドから投げ込まれ、試合が3分間中断されたのです。日本が勝利した試合後も座布団の嵐は止まりませんでした。

 当時、日本でサッカーはマイナーな競技であり、五輪でメダルなど全く期待されていなかった。それなのに、両陛下に試合を観戦して頂いていたのかと思うと胸が熱くなりました。

 たった一言でしたが、天皇陛下の温かいお言葉と皇后陛下のさりげない気配りに深い感銘を受けました。

【PROFILE】1944年京都生まれ。メキシコ五輪日本代表FWとして日本の銅メダル獲得に貢献。

※SAPIO2014年11月号