黒字大国であった日本は今や昔の話。貿易赤字が定着した中で、今年上半期の経常収支が5075億円の赤字となった。上半期としては1985年以降で初めての赤字である。こうなると浮上するのが巨額の財政赤字だが…。

暗雲垂れ込む日本経済。

そんなときこそ頼れるのは

やっぱり「金」!?

経常収支とは、海外とのモノやサービスの取引状況を金額ベースで示すもの。わかりやすく言えば、日本国としての収入と支出の差額で、いわば犢颪稼いだ額〞を示す。これまでの半期ベースでの赤字最大額は、昨年の下半期(7〜12月期)の788億円だったが、それを今回大きく上回ることとなった。

経常収支の赤字転落は、将来どのような影響が出るのか。確かなのは、それだけで国民生活は悪化しないということ。他国を例にしても、経常収支の黒字や赤字と実質経済成長率にはほとんど相関性は見られない。確かに経常収支が赤字になったからすぐに円が売られたり、国債が売られたりということはない。赤字は気にする必要がないという主張もある。一般的にはその通りだろうが、日本には特殊な事情がある。それが積み上がった財政赤字問題だ。

財務省の発表によると、この6月末の国の借金は1039兆4132億円となっている。国民1人当たりに換算すると818万円だ。経常収支の赤字化が続けば、国内資金の不足につながり、国債発行も海外資金頼みになってしまう可能性がある。日本国の財政赤字は膨大だが、外からの借り入れがほとんどないため問題は起こりにくかった。それを支えてきたのが国内の貯蓄と黒字稼ぎだった。それがついえる事態となっている。

日本の財政危機と簡単に言うが、それは国際金融に大波乱をもたらす可能性が高いということ。というのも、足元での国債発行は借換債だけで年間120兆円を超えている。対してIMF(国際通貨基金)が財政危機に陥った国へ融資できる金額は、総額100兆円とされる。つまり、一時的な緊急融資はともかくIMFも日本を支えることはできないということ。以前この連載で、日本は対外純資産の保有が世界一ということを取り上げた。その日本がカネに窮すれば、外に置いてある資金の回収を開始せざるをえないだろう。それだけでニューヨーク市場のみならず、国際金融の現場の大混乱は容易に想像できる。

日本経済の破綻に備える策として、ドル預金など海外資産を勧める論調は多い。それも一理あるが、海外市場にも影響が広く及ぶため、優位性は比較の問題ということにすぎない。そうした中で注目を集めるものこそ、世界中で共通の価値が認められている「金」ということになる。

亀井幸一郎
PROFILE OF KOICHIRO KAMEI
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表。中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。

この記事は「ネットマネー2014年11月号」に掲載されたものです。