カビの生えた食品を絶対食べない方がいい理由

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今年も残すところ3ヶ月となった。少々気が早いが、正月の風物詩ともいえる餅は、カビが生えても食べられるのだろうか?

削りとれば大丈夫なんて説も耳にするが、表面に見えるころには、深さ3cmほどまで菌糸が達しているので、決して安全とは言い切れない。発ガン性の高い毒を放ち、肝臓や腎臓に深刻なダメージを与えるカビも存在するので、安易に口にすると後悔することになりそうだ。

■表面のカビは「氷山の一角」

食中毒病気などでひとを脅かすものにウィルス、菌、カビがあり、どれもバイ菌として扱われがちだが、性質は大きく異なる。

・ウィルス … 単独では増殖できないため、ひとの細胞を利用する

・菌 … 単独で増殖可能。ひとの細胞に侵入したり、毒素で破壊する

これに対し、真菌(しんきん)とも呼ばれるカビは菌糸(きんし)と胞子で構成され、ある意味で植物に近い性質をもつ。食品やヒトに付着すると、根のような菌糸(きんし)を延ばし、枝分かれさせながら内部に侵入してゆく。

栄養分を吸収し、運搬するのが目的だ。菌糸によって得られた養分は、やがて種に相当する胞子を生み出す。キノコが「かさ」から胞子を放つのも同じ真菌のグループだからで、こうして仲間を増やしているのだ。

カビの生えたパンや餅は、食べられるのか? 表面のカビを取り除けばOK、少しなかまで削り取れば大丈夫など諸説を聞くが、かなり怪しい。ひとめで「カビ」が生えているとわかる段階になると、食品の内部は菌糸だらけになっているからだ。

成長したカビは、

・基底(きてい)菌糸 … 「根」に相当する、食品内部の菌糸

・気(き)菌糸 … 「茎」の役割を果たす、表面の菌糸

から構成される。気菌糸と胞子を見て「カビが生えた!」と気づくパターンが多いが、胞子は種や実のようなものだから、充分に栄養を吸収し成長した証拠でもあるので、内部「基底菌糸だらけ」と考えるべきなのだ。

カビの生えた餅を切断すると、表面から3cmほどの深さまで菌糸が入り込んでいたとのデータもある。水分が多く柔軟性のあるパンなら菌糸は餅以上に広がりやすいので、たとえ表面のカビを除去しても、基底菌糸のかたまりを食べるようなものだから、食中毒が起きて「当たり前」なのだ。

カビた食品でガンになる!

カビが生えた食品は、なぜ危険なのか? 無害なものもあればおいしさを増すカビも存在するが、強烈なカビ毒を放つものも少なくないからだ。

食品に利用されるカビの代表例は、

・コウジカビ(アスペルギルス属) … みそ、しょう油など

・アオカビ(ペニシリウム属) … ゴルゴンゾーラなどのブルーチーズ

・カワキコウジカビ(ユーロチウム属) … かつお節

などで、古くから食品に利用されている。魚肉が材料のかつお節が木のように固くなるのは、表面についたカワキコウジカビが水分を抜いてくれるからだ。

ただし同じ「属」でも、成長過程で強力な毒を放つものもいる。アスペルギルス属が生み出すアフラトキシンや、ペニシリウム属が放つオクラトキシンだ。

アフラトキシンは、アスペルギルス・フラバスによって作り出される発ガン性の高いカビ毒で、急性でも肝細胞の壊死(えし)や腎障害、慢性化すると肝臓ガンを引き起こす。飼料に混ざって乳牛に取り込まれると、体内でアフラトキシンが生成され、乳に混ざる危険性がある。

オクラトキシンはアスペルギルス属やペニシリウム属の一部のカビから生み出され、やはり腎疾患やガンの原因になることが確認されている。同じ「属」でも不健康な菌が存在するので、色や見ためで判断するのは極めて危険だ。

■まとめ

カビは根のような菌糸を延ばし、食品などから養分を吸収する

・表面にカビが見えたころには、内部は菌糸だらけになっている

・発ガン性の高い毒を放つカビも少なくない

アフラトキシンは、紫外線をあてると青く光る。

心配なひとは、ブラックライトで照らしてみると良いだろう。

(関口 寿/ガリレオワークス)