貴重な先制ゴールを突き刺した奥川(中央)だが、試合終了間際に左足を痛め退場。効果的な仕事を連発するジョーカーの怪我で、運命の韓国戦に暗雲が。 (C) SOCCER DIGEST

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ロスタイムの劇的な2ゴールで今大会初勝利を挙げた日本。無論、勝利が至上命題の試合で勝ち切ったのは大きい。ただし、内容は決して褒められたものではないだろう。
 
 相手は決して弱くなかった。ベトナムU-19代表は、国内の大きな期待を背負う黄金世代である。ベトナム初のサッカー漫画のモデルでもある彼らの人気は絶大で、遠くネピドーの地にも大勢のサポーターが詰めかけていた。この日も披露した、細かいパスを丁寧につなぐチームカラーは日本のそれと酷似しており、背番号10は「ベトナムのメッシ」と呼ばれる所以をキレのあるドリブルに垣間見せていた。
 
 とはいえ、本来であればベトナムの上を行っているはずの日本はパスワークが機能せず、エースの南野も何度となく決定機を外すなど、この日は“ハズレ”だった。厳しい言い方になるが、試合を難しくしたのは自分たちの不甲斐なさからである。
 
 特に25分を過ぎるまで、日本はまるで眠っているかのようだった。パススピードが一向に上がらず、球際の反応には緩慢さが目立ち、中盤をベトナムに支配されてしまう。前線は距離感は悪く、シュートへの積極性も見せられず、チームのファーストシュートが生まれたのは26分過ぎ。その後に松本がポスト直撃のシュートを二度放ったが、総じて前半のパフォーマンスは中国との初戦(1-2)を下回るものだった。
 
 そんな重苦しい雰囲気を変えたのが、後半の頭から登場した奥川だ。中国戦でも後半から起用され、左サイドからチャンスを演出したジョーカーである。
 
 痩身のドリブラーは独特のタイミングで相手を外し、果敢にペナルティーエリア内に切り込んでいく。55分には奥川のドリブル突破から関根が井手口につなぎ、後半最初の決定機が生まれた。
 
 するとその4分後、背番号16は大仕事をやってのける。
「前半は外で観ていたけど、バイタルエリアがかなり空いていると思った」
 その言葉どおり、南野の落としを高い位置で受けると、迷わず前進。右足を振り抜き、ファーサイドにゴールを突き刺してみせた。中国戦後はフィニッシュの局面に自らの課題を指摘していたが、それを克服し、進化したかのようなドリブルシュートである。
 
 その後も75分には関根に決定的なスルーパスを通すなど輝きを放った奥川だったが、89分に相手との交錯で左足をひねり、退場を余儀なくされてしまった。同点とされ、再び勝ち越したのはその後の出来事である。
 
 両脇に松葉杖を抱えて試合後のミックスゾーンに現われた奥川。怪我の状態は現時点ではわからない。
「アシストだけの選手じゃダメだから」
 まだあどけない笑顔に充実感を滲ませたドリブラーが、もし韓国戦(2日後の10月13日)に出られないとなれば……。引き続き後がない日本の立場は、ますます危うくなる。
 
【日本 3-1 ベトナム】
[得点者]
日=奥川雅也(59分)、中谷進之介(94分)、井手口陽介(96分)
ベ=ホアン・タイン・トゥン(90分)
 
取材・文:増山直樹(週刊サッカーダイジェスト)