新戦力の塩谷(左)が先発したジャマイカ戦だが、新メンバーを十分にテストできたとは言い難い。(C) SOCCER DIGEST

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 サッカーの試合を、勝ち負けだけでくくる習慣から脱却しない限り、日本代表は底上げ、強化されていかないのかもしれない。
 
 前夜からスポーツニュースは伝えていた。
「アギーレジャパン、初勝利なるか、注目されます」
 
 そしてオウンゴールの1点で勝利すると、監督や選手たちには次々に祝福の言葉が贈られた。
「初勝利、おめでとうございます」
 
 新チームを結成して間もないジャマイカは、20時間のフライトを経て、来日して2日目で試合をした。チームを指揮するドイツ人のビンフリート・シェーファー監督は言う。
「試合を終えて、選手たちには、おめでとう、と言ったよ。唯一の失点は、ジャマイカへのファウルから生まれたし、後半には明白なPKも見逃された。アジアで最強の日本に0-1、それ以上に選手たちがハートのあるプレーを見せてくれたことが収穫だった」
 
 逆に、これで「おめでとう」と声をかけられたハビエル・アギーレ監督は、額面通りに祝福を受け止めたのだろうか。
「ゴール数が内容を反映しない試合だった。20本のシュートを打ち、明確なチャンスだけでも4つはあった。チームが機能したのはうれしいが、結果には満足していない」
 
 内容は一方的だった。パターン練習のように攻撃が続けられ、ディフェンス陣は本格的に試される機会がなかった。
 
 日本は16分に、あっさりと均衡を破った後も、面白いようにバイタルエリアからペナルティーエリアへボールを運び、チャンスを連ねた。しかも日本の攻撃にミスが出ても、次の瞬間にはジャマイカからプレゼントボールが返って来る。それでも追加点は生まれず、失点のピンチもあった。
 
 78分には、長友佑都が信じ難いプレゼントパスを相手のFWダレン・マトックスに送り、ボックス内に独走された。辛うじて森重真人がカバーに入り、ショルダーチャージでボールを奪取したが、これをジャマイカのシェーファー監督は「明白なPK」と主張したのだ。
 
 アギーレ監督も、内心では激高していたのではないだろうか。
「最初の2試合で4つのミスから4つのゴールをプレゼントし、今日ももう少しでプレゼントするところだった。こういうことは完全になくさなければならない」
 もし長友が新人だったら、次の代表戦には招集されないだろう。
 
 サッカーは相対的な競技であり、それぞれの代表戦は様々な性格を持つ。単なる勝ち負けではなく、それらを踏まえた上で吟味し、評価を下す必要がある。親善試合は各国ともチャレンジやテストを織り込む場だ。そこで勝敗だけを見つめ一喜一憂していると、今年のブラジルワールドカップのように掛け値なしのタイトルマッチで面食らうことになる。
 おそらくアギーレ監督がジャマイカ戦のピッチに送り出したのは、故障中の吉田麻也を除けば、現在想定するベストメンバーだろう。
 
 シンガポールへの移動を挟む連戦という条件を考えれば、ジャマイカ戦で実験を施し、4日後のブラジル戦をベストで臨むのが常道だ。ところが指揮官は59分までスタメンをいじらず、脳しんとうを起こした香川真司も90分まで引っ張った。練習中に「右サイドでいいプレーをした」(アギーレ監督)という小林悠以外には、十分なテストの機会を与えず、むしろブラジル戦へ向けて熟成を優先した。新メンバーの太田宏介や田口泰士はデビューしたものの、プレーをしたのは2、3分間だった。
 
 親善試合で最優先されるべきなのは勝ち負けではない。まして追加点は生まれなくても、力の差は歴然としていた。逆に新しいメンバーを試すなら、この試合しかなかった。十分にテストを詰め込めなかったという点で、ジャマイカ戦は必ずしも祝福に値しない。