インサイドハーフに挑んだ香川のファーストインプレッションは? (C) SOCCER DIGEST

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「ポジションが変われば、やり方も変わるので順応に苦労する。(インサイドハーフは)ボールに触れる時間は増えるが、守備での要求も増える。どこまでできるか、試合で試してみたい」
 香川真司はそう言って、ジャマイカ戦に臨んだ。ハビエル・アギーレ監督の下でプレーする初めての試合。その指揮官が公言していた通り、背番号10は左インサイドハーフを務めた。逆三角形に組まれた4-3-3の中盤の「3」の、左の頂点に当たるポジションだ。
 
 守備での要求が増えるとの言葉通り、前半はディフェンスの意識を高く持ってプレーしている印象だった。相手ボールになったら素早く帰陣し、守備ブロックに加わり自陣のスペースを埋める。陣形が崩れないようバランスに気を配りながら、とりわけ慎重にプレーしているようだった。
 
 もっとも、終始慎重だったわけではない。CFの岡崎慎司にボールを預け、2列目から飛び出していく動きなどは、「前に行く意識は失いたくない」とも語っていた言葉通りだった。
 とはいえ、日本の攻撃は単調で厚みがなく、香川が危険なシーンを作り出す機会もほとんどなかった。中盤では良い形でパスをもらえず、前線に飛び出しても、その前に味方がフィニッシュを終えてしまう。トップ下に比べると守備のタスクやプレーエリアなど制限が多く、前半はドルトムントでのような躍動感がなかった。ワンタッチやツータッチでシンプルにパスを捌き、抜群のタイミングで前線へ飛び出した柴崎岳のほうが、インサイドハーフとして効果的な動きを見せていた。
 
 それでも、後半になって香川は“らしさ”を見せた。運動量が落ちたジャマイカの陣形が間延びすると、すかさずそのスペースを突いてチャンスを生み出していった。
 
 61分、長友佑都の縦パスを受けて左サイドでキープ。巧みなステップで敵をかわし、右足のアウトサイドでクロスボールを入れ、武藤嘉紀の決定的なヘッドを導いた。
 
 65分には、中央で本田と絡んで形を作り、柴崎が展開したパスを受けた酒井高徳の折り返しに合わせてシュートを放った。惜しくも枠は捉えられなかったが、スムーズな連係による崩しだった。
 
 2列目から走り込んでマイナスのクロスに合わせたり、後半途中から左サイドに回った本田がボールを持てば、それを追い越していったりと、インサイドハーフという不慣れなポジションを務めながらも、香川は周囲と連動して崩す持ち味をそれなりに発揮した。
 
 もちろん、ジャマイカの出来が悪かったことを差し引いて考えるべきだ。押し込まれる展開が予想される、例えばブラジルのような強豪が相手の試合では、香川は守備に重きを置きながら攻撃に絡むという難しいタスクを担うことになる。インサイドハーフとしての真価が問われるのはその時だ。
 
「得点とアシストの両方を追い求めていきたい」と試合前に語っていた香川は、このジャマイカ戦で一定の手応えを掴みながらも、インサイドハーフとしてプレーする難しさを実感したのではないか。
 
 なお、前半の接触プレーで顎を強打した香川は、脳震盪の症状を訴えチームを離れることが決まった。90分に田口泰士と交代するまでプレーを続けたが、試合後に「頭がくらくらする」と訴えて病院へ。日本サッカー協会は大事をとって香川をチームから離脱させることを決め、14日にシンガポールで行なわれるブラジル戦は欠場することになった。
 
取材・文:田嶋康輔

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