酒井高徳 (撮影/岸本勉・PICSPORT)

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 10月10日のジャマイカ戦で、もっとも注目を集めたのは誰か。

 ハビエル・アギーレ監督指揮下で、香川真司が初めてピッチに立った。国際Aマッチ出場3試合目で、武藤嘉紀がスタメンに名を連ねた。これまで川島永嗣の後塵を拝してきた西川周作が、メキシコ人指揮官のもとでチャンスを与えられた──パフォーマンスが注目された選手は、何人もあげることができた。

 個人的な興味は、最終ラインの右サイドにあった。酒井高徳である。

 内田篤人と酒井宏樹が招集されていないなかで、酒井はスタメンに指名された。9月9日のベネズエラ戦に続いて2試合連続である。

 日本代表における酒井の評価は、これまで「ユーティリティ性」に集約されていたと言っていい。内田と酒井宏は右サイドのスペシャリストだが、彼は左右両サイドでプレーできる。必要なら中盤にも対応できる。チームに戦術的多様性をもたらす柔軟性が、酒井という選手の存在価値を高めてきた。

 その一方で、独自性が見えにくかったのも事実である。

 今回のジャマイカ戦をまえに、彼は14試合に出場している。先発出場も6試合ある。そのなかには、3対2で勝利した昨年11月のベルギー戦も含まれている。だが、酒井がピッチに残した足跡は、率直に言って薄い。

 シュツットガルトで定位置をつかんでいるのだ。実力に疑いの余地はないが、日本代表のなかで何ができるのかを、そろそろはっきりと示さなければいけない時期である。

 生まれ故郷の新潟で行われた一戦で、酒井は意欲的なパフォーマンスを披露した。序盤からアグレッシブに敵陣へ飛び出し、ラストパスやクロスを供給するだけでなく、カットインからフィニッシュへ持ち込んでいく。

 決定機にも絡んだ。ふたつのアシストを記録してもおかしくなかった。

 酒井自身が評価したのは、65分の場面である。右サイドのスペースへ走り込み、ペナルティエリア内でフリーになった香川へグラウンダーのパスをつないだ。
「最初の段階で香川くんがすっと引いたのが見えたので。バリエーションを大事にしたいと思ってドイツでもやってきたので、あそこが見えたのは自分のなかで少し手ごたえがあったかな、と」

 もっとも、酒井は「収穫よりも課題を気にするタイプ」である。「攻撃への関わりがスムーズだったのでは?」と聞かれると、「やりきるという部分では良かったと思うんですけど」と切り出す。あとに続くのは厳しい分析だ。

「組み立ての部分で何回か、簡単なミスとか中途半端に終わってしまうミスがあったので。前半はクロスを1本ふかしたし、横パスを合わせそこねたし、後半はドリブルをし損ねたというか、中途半端なボールの失い方をしてしまったのが2回ぐらいあったので。細かいことですけど、そういうプレーをスムーズにやっていきたい。自分のところでしっかり起点になったり、周りの選手とのコンビネーションで崩せたりできれば、個人としても良いパフォーマンスにつながってくる。ブラジルとか別の強豪国が相手になると、そういう安易なミスからカウンターで失点という可能性も高くなるので、それはやっぱり減らしていきたいし、注意してやっていきたいです」

 DFラインを構成するひとりである以上、最優先事項は失点を許さないことだ。酒井自身も「ゼロで終われたのは良かったです」と話している。

「個人としてしっかりとした結果を出したかったというのは、正直、思います。まあでも、続けてやっていくのが一番だと思うし、次に切り替えてやっていきます」

 自己分析はどこまでもシビアだが、チームの勝利と自己アピールのバランスは取れていた。崩しの局面で選択肢を増やしている酒井のプレーは、ブラジル相手にどこまで通用するのか。馴染み深い新潟のピッチに、彼は確かな足跡を記した。 

▼ 酒井高徳

(撮影/岸本勉・PICSPORT)