日本の良かった時間帯は、本田(後方)が右から左に回り、この香川、長友と連係した60分以降。いわばザックジャパンの慣れ親しんだ形になってからだった。 (C) SOCCER DIGEST

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 アギーレジャパンが3戦目にして、やっと勝った。
 初戦はウルグアイに0-2、続くベネズエラ戦は2-2、3戦目にジャマイカに1-0という一連の流れを振り返ると、着実に進歩しているように思える。だが、それは錯覚。対戦相手が弱くなっているだけのことだ。
 
 勝ったとはいえ、ジャマイカ戦も過去2戦と同じく消化不良な試合だった。
 唯一の得点はオウンゴール。長旅の疲労を抱えた相手に20本のシュートを浴びせたが、決定的な場面で本田圭佑や武藤嘉紀が次々と外した。パスミスも多く、長友佑都は決定的なプレゼントボールを渡している。
 
 試合運びがしっくりこないのは、選手たちが4-3-3システムに馴染んでいないからだ。4-2-3-1から4-3-3への移行は、長年着ていた服を脱ぎ捨てて新調したスーツに着替えるようなもの。これが身体にフィットせず、違和感を拭えないのだ。
 
 4-2-3-1と4-3-3の大きな違いは、選手の距離感だ。
 前者が中盤に多くの選手がいるのに対し、後者は選手が幅広くピッチに分散している。個人よりも集団でのプレーが得意な日本人にとって、やりやすいのは4-2-3-1。1対1の局面が多く生まれる新システムは苦手だろう。
 
 ジャマイカ戦では、4-3-3特有の3つの傾向が見て取れた。
 
 長い球足のクサビのパスが増えた。
 奪ってから手数をかけず、3トップにパスを当てる。従来は大勢で横パスを回しながらボールを運んでいたが、3トップとなり、選手間の距離が広がったことでゴールに直結するパスが増えた。
 これは好ましい変化だ。だが、集団の中で生きる日本人選手は、サポートの少ない中でゴールに背を向けてパスを収め、ターンして突破を図るということが得意ではない。このあたり、強靭な肉体を誇る本田は収めて反転して突き進む強さを見せているが、チームとしてはまだまだ縦パスを生かし切れていない。
 
 ゴール前でのドリブルが増えた。
 前述したとおり、本田、岡崎慎司、武藤の3トップが単独で仕掛け、ファウルを獲得する場面が目立った。ドリブルもまた、日本人が得意なプレーとは言い難いが、アルベルト・ザッケローニ監督時代に比べて重要性が増してくるだろう。
 
 アーリークロスが増えた。
 サイドバックが高くポジショニングして、数的優位を作っていたザックジャパンでは、サイドを深くえぐり、ゴールの脇を取ることがゴールへの近道となっていた。
 だが、いまはサイドバックの位置が下がったことでゴールの脇を取る場面が減り、アーリークロスが増えた。つまり、待ち構える敵に競り勝ってゴールを決めなければならなくなった。
 これは日本人が得意とするプレーではない、実際、多くのクロスがゴール前に放り込まれ、岡崎も果敢にオーバーヘッドを繰り出したが、得点に結びつくことはなかった。細かいサイドからの崩しではなく、放り込み気味のボールが増えるという傾向を考えると、ハーフナー・マイクが貴重な戦力になるかもしれない。
 
 見ている側にも窮屈さが伝わってくるジャマイカ戦だったが、それでも60分以降は日本が猛攻を仕掛けた。もっともそれは、選手たちの4-3-3の理解が進んだからではない。ジャマイカの足が止まったことに加えて、ザックジャパンの慣れ親しんだ形が戻ってきたからだ。
 小林悠が投入されたことで本田が左へ移り、これで本田、香川、長友のトライアングルが復活。本田、もしくは香川が縦の隙間を覗きこみ、大外を長友がスプリントする。この3人が近い距離でプレーすると、様々なことが可能になる。
 消化不良な試合の中で、まずまず良かった時間帯がザックジャパンの形だったというのは皮肉なことだ。