2014年10月9日、中国・南寧で開催された世界体操選手権の男子個人総合で、日本の内村航平が優勝し、史上初の5連覇を達成した。

日本が歓喜に沸く中、表彰式で水を差す一幕があった。金メダルをたたえ、「君が代」が流れると、残りわずかというところで突然、音声が消されてしまったのだ。

残りわずかというところで終了

内村は最初の種目「ゆか」で15.766の高得点を叩きだし好スタート。「跳馬」では着地をぴったり決め、会場中から大きな拍手が送られた。決勝に進出した6人の中で唯一、全種目15点越えとなる合計91.965点で、2位以下に圧倒的な力の差を見せつけた。

表彰式では、2位のマックス・ウィトロック(イギリス)、3位の田中佑典とともに表彰台へ上った。君が代が流れると、会場中の人々が立ち上がり、日本人観客からは斉唱が聞こえる。カメラは内村の母・周子さんが「航平おめでとう」と書いた日の丸を持ち、君が代を熱唱する姿も映していた。

すると突然、館内で流れる君が代の音量がフェードアウト。最後の歌詞「(こけの)むすまで」を残すだけのところで音声がしぼられてしまった。会場には、観客の歌声だけがむなしく響いた。

まさかの展開に内村も思わず苦笑い。戸惑ったのか、田中に向かって何か確認するように話しかけていた。

その様子はテレビでも生中継されていたため、

「何か水を差された気分......」
「君が代途中で切られちゃったよ! 許せねえ〜」
「最後が切れちゃってちょっとびっくり」

とツイッターには視聴者の納得がいかないという声が相次いで投稿された。

中国国歌は45秒ぴったり

君が代をめぐっては、2011年に韓国で開催されたバレーボールワールド・グランプリ予選ラウンドでも君が代の演奏が途中で止まることがあった。当時も試合を見ていたファンからおかしいという声が上がった。実は国歌は各国45秒以内というルールがあったのだが、各国からも批判が寄せられ、規定は変更された。

今回の場合はどうだろうか。日本体操協会からは「びっくりしている。今まではこんなことはなかったのでは」という答えが返ってきた。今大会から45秒ルールが新たに設けられたらしく、同協会はいつ決定、発表されたのか確認を進めているところだという。

このルールにより、女子団体で優勝したアメリカの国歌斉唱も途中で演奏が終わる事態となった。表彰台に立つ選手らも、けげんそうにお互いの顔を見合わせていた。

一方、疑惑の採点で中国が金メダルを獲得した男子団体では、表彰式で国歌「義勇軍行進曲」を会場が一体となって熱唱した。ちょうど曲が終わるところが45秒ぴったり。何か勘ぐりたくなるタイミングのよさだ。

これまでも君が代は中国で目の敵にされてきた。08年の北京オリンピックでは運営が「礼儀正しい応援を」とアナウンスを行わざるを得ないほどの大ブーイングが発生。今年9月、韓国・仁川でのアジア大会では競泳で金メダルを獲得した中国人選手から「日本の国歌を聞くと嫌な感じ」という発言が飛び出したことも記憶に新しい。

突然の45秒ルールの決定にどういう事情があったのかはまだ分からない。しかし、これまでの経緯から、ネットでは

「せこい嫌がらせ」
「もっと短く切ったならともかく時間短縮にもなりゃしない」
「スポーツに政治や私念絡ませてくる」

と、何らかの意図があったととらえる意見が多い。