大相撲秋場所(両国国技館)は横綱・白鵬の3連覇、千代の富士と並ぶ史上2位の通算31回目の優勝で幕を閉じたが、日本中の大相撲ファンの目を点にさせたのがモンゴルの“怪物”新入幕力士の逸ノ城(21、湊部屋)の活躍だった。

 幕下15枚目格で初土俵を踏んでまだ5場所目。右も左もわからない状態にもかかわらず、中盤まで落とした星は1番だけ。あまりの快進撃に終盤、大関、横綱が相次いでストッパー役を命じられたが、これまた次々に突き破られ、ついに優勝争いのトップを走る白鵬まで駆り出された。

 この逸ノ城、表情や話し方はおっとりしているが、内に秘めた勝負師根性はなかなかのもの。それを見せつけたのが、13日目の横綱・鶴竜戦だった。
 「この2日前、逸ノ城は稀勢の里戦で2回自分から突っかけた後、3回目に左に飛んで叩きこみ、大関戦初勝利を挙げた。これですっかり味をしめたようで、鶴竜戦でも最初にワザと自分から突っかけ、2回目、稀勢の里と同じように鶴竜が頭を下げて出てくるところをやはり左に変わって叩きこみ、史上最速の金星となった。この勝ち方をめぐって意見はさまざま。中には横綱を汚い手で引っ掛けるなんて失礼極まりない、と本気で怒る親方もいましたが、逸ノ城は『新入幕だから何でもやってやれと思った。変わることは朝稽古の後で決めました』とケロリとしたもの。こんな図太い新入幕力士は見たことがありません」(担当記者)

 1敗対決となった14日目の白鵬戦は、さすがに横綱が貫禄の違いを見せつけて上手出し投げで鮮やかに転がし「いい壁になってやるという緊張感はありました。1横綱2大関を倒してきただけあってやはり重い。来場所も活躍してほしい」と胸をなで下ろしていた。

 惜しくも100年ぶりの新入幕優勝こそならなかったが、これだけ場所を盛り上げれば、殊勲、敢闘のダブル受賞は当然。「ボクは怪物ではありません。人間です」と澄まし顔の逸ノ城は来場所、史上最速の三役も濃厚だ。

 “ザンバラ髪の先輩”遠藤には、もはや出る幕がない。