『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ2』(まきえりこ/マガジンハウス)

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小学生がたいへんなことになっている。

小学1・2・3年生のおしゃれ雑誌「ニコ☆プチKiDS」を開くと、
「ねぇ、セーラはようかいウオッチがスキなのー」
「おゆなも!! ようかいたいそうおどろうよ♪」
と読者モデルちゃんたちが和気あいあい。通学ファッションの着回しを披露する。

小学生高学年向けファッション誌「JSガール」では
「旬のチークテクで盛りフェイスになろう▼(はあと)」と、
チークの技術を懇切丁寧に指南。
「丸顔のコのチークはタテにのせるとGOOD☆」
「ちょっと前に流行った原宿系まんまるチークはちょっと古い! 今はナチュラル系が激アツ▼(はあと)」
と盛り上げる。

メイクばっちり。キラキラ街道を突っ走る女子小学生たち。
では、男子小学生はどうなのか。

「ポケットが魔窟」
「砂を体中から産出する」
「髪さらさらとか美肌とかが社会的にマイナス」
「友達に生えてきた下の毛の本数を母親に連日報告」
「いちはやく生えた子の家を訪れ、おねだりして見せてもらう」
「プールでは互いの尻の穴を見せ合う」
別の意味でたいへんなことになっていた。

コミックエッセイ『小学生男子(ダンスィ)のトリセツ2』(まきえりこ/マガジンハウス)は、人気ブログ「ちくわの穴から星☆を見た」の書籍化第二弾。消しゴムのかすをこよなく愛し、棒を見ると拾い、石ころを見ると蹴らずにはいられない小学生の息子と、夫と猫2匹との暮らしを描く。

幼児に毛が生えたような低学年男子が、高学年男子になるとどうなるのか。
低学年時代の特徴はそのままに……(そのままなのか!)、下記のような特徴が加わるという。
一部をご紹介しよう。

●手ぶら命、荷物はランドセルにフックがけ、またはムリクリ挟む。
●経済の単位は「1うまい棒円」。
●足が臭い、体も臭い。自分でも気にして消臭スプレーを直がけ。
●幸せタイムは唐揚げのつまみ食いの時。
●誰に毛が生えたかに詳しい
●水筒は買い換え4個目、筆箱も4個目、消しゴムは100個目?

なんか知ってる。小学生の息子がいなくても、遠い記憶をたどらなくても、味わえる“あるある”感。
けっこう身近なところにいたはず、こういう人……お前か! と次々浮かぶ。

この本に登場するお父さん(作者の夫)からして、精神年齢は「小5」。 “高学年になった息子とは『父と子』としてより、『仲間、友達』スタンスで接しがち”だという。頼りなさを払拭すべく、「父子もの」の映画を見に行けば、息子そっちのけで雑誌「ムー」のUMA特集に夢中になり、挙げ句、ポップコーンを盛大にぶちまける。「(UMA=未確認生物は)息子も大好き、でも夫が卒業していないのはちょっとつらい」というのが妻の偽らざる本音だ。

ハタから見ると微笑ましくても、いざ自分が直面すると腹立たしいこともあるだろう。
やたらと手ぶらで歩きたがる彼氏。
けっこうな雨が降っても傘を差したがらず、洗濯ものを増やす夫。
つまらない下ネタに執着し、しつこく繰り返す上司。
口先だけで返事をする会社の後輩。

想像するだけでイーッとなる状況だが、それもこれも小学生男子魂ゆえ。
「男はいくつになっても小学生」のリアルがそこにある。
(島影真奈美)