[10.9 AFC U-19選手権GL第1戦 U-19日本代表 1-2 U-19中国代表 ミャンマー]

 初戦黒星という闇の中で、唯一の光明だった。南野拓実(C大阪)は、やはり格が違った。U-19世代の難しさは「1年生」だらけのチームになることだ。高校年代を卒業し、プロや大学で1年目の選手たちは、出場機会をつかみにくい。ユースや高校では不動のレギュラーであり、あるいはチームのエース格であった選手たちが、一様に「これから経験を積んで良くなる」1年生になってしまう。新しいチームに慣れるのに忙しく、試合や勝負の勘を失っていくことが多い。その中で、C大阪U-18に所属した高校時代からプロの世界で出場機会と評価を得ていた南野は、別格だ。

 鈴木政一監督が「呼べるときに呼んでおかないと」と話していたように、所属クラブでの出番が多いために、他のメンバーに比べて招集回数は少なかった。それでも、合流すれば必ず結果を出して帰った。特に印象深いのは、昨年 6月の合宿における千葉との練習試合だ。J1に見劣りしない戦力を誇る千葉は控え組が中心だったが、試合を圧倒した。U-18日本代表の多くの選手が「プロを相手にして個の強さを感じた」と話す中、あっさりと個人技でゴールを奪って引き揚げて来たのが南野だった。南野の招集が難しい中、今年に入ってU-19日本代表となったチームは、苦戦を続けていた。8月に静岡で行われたSBSカップ国際ユースサッカー大会では、PK戦以外で勝利を挙げることはできなかった。不調のチームを南野が救うか、それとも連係面で苦しむのかは、一つのキーポイントだった。

 10月9日、U-20W杯ニュージーランド2015の出場権4枠を懸けたAFC U-19選手権ミャンマー2014が開幕した。南野に対する唯一の懸念は連係面だったが、要らぬ心配だった。日本は、開始25秒で中国にPKを与え、60秒も経たないうちに失点するという最悪のスタートを強いられたが、6分に南野が鋭いカットインからチームのファーストシュートを放ち、チームを重苦しい雰囲気から解き放っていった。8分には川辺が右へ展開した後、広瀬の折り返しを受けて南野がシュート。少しずつリズムに乗っていくと、16分に今夏のワールドカップでフル代表に予備登録されていたほどの実力を持つ男が魅せた。

 南野は左サイドで縦パスを受けると、寄せて来る相手を物ともせずに振り払いながらゴールへ向かい、左足のシュートを豪快にたたき込んだ。完全な単独突破だっただけに、モノが違うという印象を与えた。しかし、チームはその後の好機を生かしきれずに失速。前線の南野への配球も滞り、南野が中盤に下がってボールをピックアップするシーンが増えていった。南野は「個人的に運んでいけるスペースがあると感じたし、ボールを触りながらリズムを作ることは、このチームで結構やっている。でも、基本は、もっと前で受けたい。守備から攻撃に変わる時の切り替えの速さや押し上げが足りず、ゴール前で選手の距離感が悪いのは感じた。自分も含めて(前線の)動き出しの質がまだまだ。相手が守って来た中では、もう一つ必要」と、攻撃のテンポが上がらなかったもどかしさを明かした。試合は、後半29分に左DF坂井大将(大分U-18)とのワンツーから南野がシュートを放ったが、相手GKのセーブに防がれるなど焦れる展開となった。そして後半32分には中国に直接FKを決められ、再び勝ち越された。日本は終盤にオナイウ阿道のクロスを南野が狙ったが、これもGKに止められた。

 大事な初戦で日本は黒星。今後、2連勝をしても当該チーム間成績や得失点差など他チームとの成績比較で上回らなければ決勝トーナメントへ進めないという緊急事態に陥った。南野は「自分たちのサッカーができる時間はあったので、次に生かしたい。もっとサイドで何度も揺さぶって、スコアが1-1のときに相手をもっと疲れさせることができたはず。細かいミスで相手ボールになったところしか怖いところはなかった。ただ、立ち上がりのミスとかはいつもと違う雰囲気で飲まれてしまった感はあったし、勝ち越された後は雑になっていたかなと思う。こういうミスを繰り返してはいけない。あまり時間がないので割り切ってやるしかない。あと2つ勝つしかない。ハッキリした」と顔を上げた。敗戦の中で違いを見せたエース、南野。窮地を救えるのは、この男しかいない。

(取材・文 平野貴也)
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