全米オープン準Vの快挙を引っ提げ、錦織圭(にしこり・けい)が楽天ジャパンオープンに凱旋(がいせん)、見事優勝した。

そんな若き日本のエースの姿をひと目見ようと、会場となった東京・有明テニスの森には初戦から多くの人が押し寄せ、至る所で“錦織フィーバー”が繰り広げられた。

錦織が今年の同大会に初登場したのは、大会2日目の9月30日。この日の彼はダブルスのみの出場。しかも火曜日だったにもかかわらず、9時30分の開場前からゲート前には約500人のファンの列ができ、最終的な入場者数は9494人を記録した。

錦織のシングルス1回戦が組まれた翌10月1日から、最終日である5日までのチケットは指定席、自由席とも完売。大会関係者によれば過去、世界トップ選手であるロジャー・フェデラーやラファエル・ナダルが出場した年にしか起こらなかった現象だという。

さらには会場内に設けられたテニス用品メーカー各社の出店も、連日の大盛況。その中のひとつ、錦織が契約するラケットメーカー「ウイルソン」のスタッフが言う。

「訪れてくださるお客さまの数は、昨年の倍以上ですね。このブースでラケットの販売は行なっていなくて、シューズやウエア、小物が中心なのですが、それでも売り上げは昨年比1.5倍を超える勢い。錦織選手の全米オープン準V以降、彼の使用ラケットについての問い合わせもひっきりなしに寄せられていて、皆さんの関心や注目度の高さをひしひしと感じます。これを機に、テニスに縁のなかった層、特にお子さんたちにウチのラケットをアピールしていきたいですね」

子供といえば、今年は大会序盤の平日午前中でも、親に伴われた小学生くらいの男の子の姿がいつも以上に多く見受けられた。学校はどうしたのだろう? 気になって、テニスウエア姿の息子を連れた30代半ばとおぼしき母親に話を聞いてみると……。

「大阪から来ました。息子は週に5日、地元のテニススクールに通わせています。世界の一流選手のプレーを子供に生で見せられるのは、日本ではこの大会しかないので学校は休ませました。小学生のうちは習い事のほうを優先させてもいいと思って。それに今年は圭クンが全米オープンで準優勝したので、どうしても来たかったんですよ。初日から3日目まで親子で泊まりがけです(笑)」

準決勝や決勝を目当てに来ても、その前に錦織が負けてしまっている場合も考えられた。でも、大会初日から3日目までを押さえれば、確実に彼の試合を1試合は見られるという算段なのだ。

と、そこへ息子クンがひと言。

「僕ね、ラケットは『バボラ』のピュアドライブやねん」

ピュアドライブといえば、ジュニア用でも定価1万4000円(税抜き)はする、結構なシロモノだ。

そういえば、前出のウイルソンの担当者は「静岡からの親子連れもいらっしゃいましたよ」と言っていた。「わが子を第2の圭クンに」と願う“お受験ママ”ならぬ“おテニスママ”と、そうした親の期待を一身に背負った子供たちもまた続々と増えているのである。

錦織の躍進の影響で、大いににぎわった今年の楽天ジャパンオープン。ただ、それはつまり彼あっての盛況だったとも言える。日本に本当のテニス人気を根づかせるまで、彼には当分の間、今年並み、いやそれ以上の成績を残し続けてもらう必要がありそうだ。