FX(外国為替証拠金取引)では常に様々なリスクが存在する。30年以上の経験を持つ為替のスペシャリストで、バーニャマーケットフォーカスト代表の水上紀行氏がリスクのとらえ方を解説する。

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 FXにおけるリスクはさまざまです。「価格変動リスク」や米雇用統計、中央銀行総裁の記者会見などによって大きく相場が変動する「イベントリスク」、金曜のニューヨーククローズと月曜のシドニーとの間で、価格レベルが乖離すること起こりうる「週末リスク」など。

 中でもテロや戦争、さらには財政破綻など国・地域から生じるリスクを「地政学的リスク」と言います。相場に与えるインパクトが大きいのはこのリスクでしょう。

 最近ではウクライナ情勢やイスラエルのガザ地区侵攻などもあげられます。100年に一度と言われたリーマンショックのような未曾有の大事件も、ある意味、地政学的リスクだと言えます。

 地政学リスクとも言えるリーマンショックの時は、米株で大きな損失を被った米系証券が、その損失を当時盛んに行われていたキャリートレード(高金利通貨買い/円など低金利通貨売り)の利益を確定することによって埋め合わせようと、大量の豪ドル/円やNZドル/円などを叩き売りました。

 結果、豪ドル/円は3か月で約45円もの急落となる事態になりました。大きな資金が移動すれば、相場のところどころに置かれていた買いポジションのロスカット(売りオーダー)が発動し、さらに値が急落していくという連鎖が続きます。

 また混乱状態のマーケットでは取引が閑散となり、通貨の売買が成立しなくなることもあります(流動性リスク)。そうなるとパソコン画面で見ているレートとはかけ離れたレートで約定せざるを得なくなり、不利なレートで決済することもあります。レートは常に存在しているわけではありません。

 リーマンショックはアメリカにとどまらずユーロ圏での金融危機をも引き起こす事態となりました。これによりユーロ/ドルは2012年の2月〜7月の間で1400ポイントも下落しました。ユーロが大幅に売り込まれる一方で、多く買われたのが円です。リスクオフムードの中で円買いが進行し、日本は歴史的にも過度な円高に苦しめられることとなりました。

 しかし「リスク回避の円買い」とまで言われ、リスクから逃れる手段として円買いを行うのはここ長年の世界的認識でしたが、この考え方はそろそろ終わりを告げるのではと見ています。

 なぜなら最近、日本は周辺国との間で緊張関係が高まっています。こうした状況下、もしも周辺国との小競り合いであっても発砲事件などが勃発すれば、ドル/円は少なくとも5円は急上昇(円安)することを想定しておく必要があると思います。

※マネーポスト2014年秋号