ソチ五輪が終わって早8カ月。10月4日、ジャパンオープンが行なわれ、フィギュアスケートの新シーズンが開幕した。

 男女2人ずつが出場し、日本、北米、欧州の3地域対抗戦であるジャパンオープンは欧州が優勝。日本は3位となり3連覇を逃した。女子の個人ではロシアのホープ、エリーナ・ラディオノワが優勝、日本の宮原知子が2位に入った。

 昨シーズンまでトップで活躍したスケーターたちの多くが現役を引退したり、休養に入ったり。一気に世代交代が進み、今シーズンの女王争いはガラッと顔ぶれが変わる。日本の浅田真央が休養、韓国のキム・ヨナが引退と、トリノ五輪後から8年もの間、世界フィギュアをけん引してきた2人がそろって不在となる今シーズンはまた、次の平昌五輪に向けたスタートのシーズンでもある。

 世代交代の第1波はソチ五輪だった。浅田やキムらベテラン勢を抑え、五輪女王になったのはロシア期待の星、18歳のアデリナ・ソトニコワだった。地元開催でアドバンテージがあったとはいえ、勢いのある演技に対して高得点が出たのは、新しいヒロインの登場を歓迎したからに違いない。ソトニコワが五輪女王として臨む今シーズンでどんな演技を見せてくれるか、楽しみなところだ。

 ただしソトニコワも安穏としていられない。同じロシアの若手が次々と世界の舞台に出現しており、その座を奪いかねないからだ。ソトニコワがもっともライバルとして意識しているのは、ソチ五輪団体に出場して金メダルに貢献したユリア・リプニツカヤだろう。昨シーズン、赤いコスチュームを着たフリープログラム「シンドラーのリスト」で印象的な演技を披露して世界のフィギュアファンを魅了した逸材はまだ16歳だ。

 新しいフリープログラムは「ロミオ&ジュリエット」というフィギュア界の定番ナンバー。今シーズンの飛躍がさらに期待されるだけに、ユリア版ジュリエットでどんなプログラムを見せてくれるのか興味は尽きない。

 この2人に対抗してくるのは、優美で可憐な19歳のグレイシー・ゴールド(米国)と、ジャパンオープンでも優勝したラディオノワになりそうだ。

 ソチ五輪女子シングル4位と健闘したゴールドは、クセのない基本に忠実で美しいジャンプとスピンが特長。これまでなかなかタイトルに縁がなかったが、試合でしっかりと実力が出せるようになれば、女王の座を奪う実力の持ち主と言える。

 世界ジュニア選手権で2連覇している15歳のラディオノワは細身の身体ながら力強い演技ができる骨太な選手で、すでにシニアでも年上スケーターに遠慮せずに結果を残している。昨シーズンはネーベルホルン杯優勝をはじめ、グランプリ(GP)大会のスケートアメリカ3位、NHK杯2位と好成績を挙げ、GPファイナルでは4位だった。1つ年齢を重ねた今シーズン、どう変貌を遂げているのか楽しみだ。

 ロシアとアメリカが優勢な今シーズンだが、それに対してアジア勢がどう食い込んでいくのかにも注目が集まる。中国の新鋭17歳の李子君、そして「ポスト浅田」と期待される19歳の村上佳菜子、16歳の宮原知子、18歳の本郷理華ら日本勢が、どこまでGPシリーズのタイトル争いに顔を出せるかだ。

 日本勢がトップ6で争われる12月のGPファイナルの一角に入るにはシリーズ6戦の中で表彰台に上らなければならないが、チャンスがないわけではない。これまで日本が守ってきたGPタイトルや、常に世界のトップ争いの一翼を担うポジションを手放さないためにも、村上や宮原らの奮闘に期待がかる。

 四大陸選手権で初優勝して乗り込んだソチ五輪では思い描いたような演技ができずに女子シングルで12位に終わった村上。その後、日本で行なわれた世界選手権でもSP、フリーともに10位、総合10位と振るわなかった。昨シーズンで引退も考えていたが、不甲斐ない結果に終わったことで「このままでは満足できないので、もう一度やり直す」と現役続行を決意。それだけに今シーズンにかけるモチベーションは相当に高いはずだ。

 日本女子のエースとして新フリープログラム「オペラ座の怪人」で力強い滑りを見せて、世界トップ争いに加わって欲しいもの。村上が気を吐けば、それに続く宮原、本郷にも良い風が吹くに違いない。浅田不在の今シーズンは、日本女子の正念場となるだろう。

辛仁夏●文 text by Synn Yinha