特集 アジア大会2014の発見!(28)

 仁川アジア大会の男子バレー決勝が3日夜行なわれ、日本は直前の世界選手権で6位と躍進したイランに1−3で敗れ、準優勝に終わった。「挑戦者のつもりで挑んだ」(南部正司監督)ゲームだった。今大会で見えた南部ジャパンの収穫と課題とは何だったのか。

 第1セット、中盤で4点のビハインドから越川優主将のサーブで崩し、清水邦広がスパイクを決め、相手スパイカーにプレッシャーをかけミスを誘発して一気 に20-18と逆転。いけるかと思われたが、石川祐希のスパイクがブロックにつかまるなどで、再逆転を許し26-28で落とした。2セット目は日本のサー ブがよく走り、25-23で日本がとった。3,4セットは逆にイランのサーブに崩され連続失点を奪われ、19-25、19-25で失った。もっと一方的な 展開になる可能性も高かったため、この内容は善戦と言っていい。

 イランとの差は、まず何と言ってもサーブの精度だ。イランはジャンプサーブでもジャンプフローターサーブでも非常に効果的なサーブで攻め続け、しかも、 ミスがほとんどなかった。サーブが強力だったゆえに、日本がブロックを食らうケースも増え、被ブロック本数もイランが6に対し、日本は13もあった。

 しかし、開催国韓国に快勝し、イランからセットを奪ったこの銀メダルは南部ジャパン初年度のひとつの成果として評価することができるだろう。前回のアジ ア大会では金だったが、この4年間でアジアの情勢はまるきり変わった。アジアでトップを争うのは長らく日本と韓国、中国だったのが、イランが頭一つ抜けて 世界の強豪国の仲間入りをして、日本はいずれにも歯が立たなくなってしまった。2011年のアジア選手権ではインドにも星を落とした。

 世界選手権に出場できなかった今年度、今大会は最も重要な大会として位置づけられ、当然結果を求められた。しかし、南部監督は積極的に若手を選抜し、か つコートにも立たせた。ミドル3名は全員が199cm以上で1990年代生まれだ。また、星城高校時代に史上初6冠を達成した中央大1年の石川祐希、慶応 大4年の柳田将洋にも出場の機会を与え続けた。緒戦サウジアラビア戦では大差をつけてから石川、柳田をそれぞれ投入。第2戦のパキスタン戦も、1セット目 の終盤に、まず、石川をピンチサーバーとしてミドルブロッカーのところで起用し、サーブ順が終わってからも交代せず、またリベロとも代わらずコートに立た せ続けた。続いて、柳田も同じように起用した。

「少しでも国際大会の公式戦で、出場経験を積んで欲しかったからです。特に、レセプション(サーブレシーブ)を経験させたかった」(南部監督)。石川は第2セット以降、スタートから出場。この経験は後に生きることになった。

 クウェート戦ではスタメンとして起用された石川だが、サーブで狙われて崩され、ベテランの米山裕太に交代。「(レシーバーとレシーバーの間の)関係性を 突かれてやられただけで、本人のスキル自体の問題ではありません」(南部監督)とのことだったが、タイ戦ではまったく出番がなく、続く中国戦でもピンチ サーバーが一回のみ。こちらから質問をいろいろ投げかけても、本人のコメントは「別に......」「特にないです」と素っ気ないものだった。

 だがトーナメントに入った準々決勝、インドとの対戦で先に第1、第3セットをとられ、絶体絶命に陥った全日本を救ったのがこの石川だった。第3セットも リードされた終盤にピンチサーバーで投入されエースを奪ったが、あとがない第4セットのスタメンに石川を抜擢。「(試合に出られない間は)出たくて出たく て、ずっと、出られたらとにかくやってやろうと思っていました。プレッシャーは感じませんでした」との言葉通り、サーブにスパイクにブロックに大活躍。途 中出場ながら16得点を挙げる働きを見せた。

「予選で出ていたときは、正直初めてのシニアで戸惑うところもありました」と本音もちらり。「だけど、今日はそんなことを言っている場合ではないので、とにかく何とかしてやろうという気持ちだけしかありませんでした」

 司令塔の深津英臣も「今日は本当に大学生3人(石川、柳田、愛知学院大・山内晶大)に助けられた試合だったので感謝しています」、南部監督も「期待以上の働きをしてくれた」と合格点をつけた。

 石川は、準決勝以降スタメンとして定着。準決勝の韓国戦でも、ビッグサーバーの越川と並ぶ時速114kmのサーブで3本のエースを奪った。

 決勝後は「1セット目の終盤までリードしていたのに、自分がシャットアウトされてしまったりと、連続で失点してしまったことが悔やまれます。世界を相手に戦っていくには、細かいところを詰めていかないと勝てない。そう痛感した試合でした」(石川)

 越川主将は「初めて日の丸をつける選手がたくさんいるこのチームで、今大会、決勝のこの試合まで来られたことを嬉しく思っています。ここ数年の日本はア ジアでベスト3にも入れないチームでした。イランは世界で通用するチームで、そことある程度戦えたこと、ここまでできたことは、自分たちの成長も期待でき るし、今後はイラン以上にも勝てる力をつけていきたい」

 予選からずっとフル出場し、多くの試合でベストスコアラーとなった越川をはじめとするベテラン組がいてこそのこの結果だろう。越川のサーブで崩し、トランジションアタック(※)を石川が決めるシーンはその象徴といえる。
※相手スパイクをレシーブして、攻め返すこと

 また、南部監督は「イランはやはり何枚も上手だなと感じさせられました。今日の結果が今の実力。ただ、できるだけ多くの若い選手を使って、なおかつ勝利 を求められる中でのこの結果はある程度評価できると思っています。必ずこの経験を来年以降に活かし、リオ五輪をつかみ取りたい」と振り返った。

 来年9月、日本でリオ五輪出場権のかかるワールドカップが開催される。今大会の経験を糧にして、ひとつでも多くの勝利をつかんで欲しい。

中西美雁●文 text by Nakanishi Mikari