銀メダルに終わったなでしこジャパン。選手たちは、この結果に到底満足できなかった。(C) SOCCER DIGEST

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 海外組不在で、3人の初招集組や代表経験が浅い若手を加えたチーム構成だったとしても、宮間あや、川澄奈穂美、阪口夢穂、岩清水梓ら百戦錬磨のコアメンバーがいることを考えれば、決勝進出は当然の結果と言ってもよかった。
 
グループリーグ初戦の中国にはスコアレスドローと勝ち切れなかった。しかし、その後の対戦相手はヨルダン、チャイニーズ・タイペイ、香港、ベトナムと、よほどのことがない限り負けることが想像できない格下との試合が続き、計5試合で27得点・0失点と、圧倒的な力の違いを見せつけてファイナルに駒を進めた。
 
 迎えた北朝鮮との決勝戦こそ、唯一の“本番”だった。佐々木則夫監督も「この大会で一番、戦いたかったのが北朝鮮だった」と切望していたカードである。これまでの対戦相手とは一線を画すアジアの強豪国に対して、フレッシュなチームはどれだけの力を示すことができるか――。
 
 結果は1-3。走力、フィジカル、スピードで上回る北朝鮮のハイプレッシャーに最後まで手を焼き、鋭いカウンターに屈して、連覇は達成できなかった。
 
 ベストメンバーを揃えた“本来の”日本であれば、おそらく、相手のプレスも自慢のパスワークでいなし、高い位置からの連動性+アグレッシブな守備でフィードの精度を狂わせ、息の合ったラインコントロールでピンチを未然に防いだだろう。
 
 しかし、佐々木監督の下、主力組が長い時間をかけて築き上げてきた基本戦術を、今回のチームは全体でまだ完璧に体現し切れていなかった。攻守両面で微妙なズレが生じ、小さなミスが連鎖して大きなエラーを引き起こした末に、失点を招いた。
 
 連覇がかかるなか、結果を出せなかったのは大きな失望である。岩清水が「優勝しに来ていたので、非常に悔しいです」と落胆の表情を浮かべれば、阪口も「ただ単に悔しいっていう気持ちでいっぱいですね」と視線を落とす。銀メダルでは到底納得できない想いを口にした彼女たちは、チームをタイトルに導けなかった責任も強く感じているに違いない。
 ただ、今回のアジア大会の『主役』はある意味、彼女たちのような実績十分な主力たちではなく、これからの成長が求められている若い選手たちだったのではないだろうか。来年のワールドカップのみならず、その先も見据えれば、戦力の底上げは常に推し進めていかなければならない。
 
 当然、下からの突き上げはチームの活性化にもつながる。右SBのレギュラーを狙う18歳の羽座妃粋は「チームの雰囲気や意識の違い、サッカー面ではスピードの違いとか、そういうのは自分のなかで課題が見つかって大きな影響を与えてもらっていると思います。この時間を大事にして、少しでも多くのことを学んで帰って、自分の課題に取り組んでステップアップにつなげていきたいです」と、多くの刺激を受けたようだ。
 
 北朝鮮との決勝戦ではFWとサイドハーフで起用され、フル出場を果たした19歳の増矢理花は「いろんな戦い方に応じてプレーを変えるとか、常に集中を保ち続けることとか、たくさんのことを学べた」と手応えを口にする。
 
 川澄は「成長するのはこれから。今大会で得た経験を今後どうつなげていくか」と後輩たちのステップアップを期待しつつ、「それは若手に限らず」と、主力メンバーや中堅のさらなる進化も重要視する。
 
 アジア大会連覇は逃したが、その“代償”として手に入れたものは、いったいどれだけの価値があるのか。それを知るのはもうしばらく先のことになりそうだ。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)