日と民間のアナリストでは秋以降の景況の予測に開きがある。物価上昇に見合う賃金上昇が実現されると考える日銀と、そうでないとみるアナリストたち。経済指標はどちらが正しいと示すだろうか。

2回目の消費増税で納得感は得られるか

強気の日銀と、慎重姿勢を崩さない民間専門家。景気見通しに対する両者の差が広がっている。

●大半が目標達成に懐疑的

7月14〜15日の金融政策会合で、4月にまとめた「経済・物価情勢の展望(展望レポート)」の中間評価が行なわれた。消費税率引き上げの影響を受けて、CPI(消費者物価指数)見通しが下方修正されるのではないかと注目を集めていたが、2014年度の実質GDP(国内総生産)成長率の見通しを従来の前年度比1・1%から1・0%に引き下げただけだった。CPI(生鮮食品を除く)見通し(消費税率引き上げ分を除いたベース)については、2014年度が1・3%、2015年度が1・9%、2016年度は2・1%と据え置かれた。

日銀の黒田東彦総裁は、「2015年度を中心とする時期に、安定的な物価上昇率2%に到達する見通しに変わりはない」と、これまで以上に強気の姿勢で会見に臨んだが、多くのメディアは民間専門家の予測との開きを指摘した。

5月までのCPIは上昇しており、夏場には円安効果の一巡などで上昇がいったん、頭打ちになると予想されているが、この点は民間予測と一致している。

違いが顕著となるのは秋以降だ。日銀見通しが秋から加速して、2015年度にかけて2%に達するのに対し、日本経済研究センターがまとめた民間エコノミスト42人の予想平均は、2014年度が1・11%、2015年度が1・12%、2016年度が1・30%とほぼ横ばいで、日銀予測とは大きな開きが出ている。

また、32人の民間専門家が「日銀の目標は達成できない」と予測しているが、日銀政策委員の予測値も実際には幅がある。2015年度の1・9%は9人の政策委員の中央値で、1・2〜2・1%の幅がある。民間予測同様に1%台前半とみる政策委員も複数いる。

●減少している実質賃金

両者の違いの原因のひとつに、実質所得を背景とする個人消費の動向がある。日銀は、春闘による大手企業の賃上げ、人手不足による賃金上昇、雇用改善などを追い風として、消費増税の反動減は夏以降に消えて物価上昇が加速するとみている。

日銀が物価上昇を前面に出しているためか、市場には「値上げは許される」との雰囲気が浸透している。食料品をはじめ、原油価格の上昇が一服したにもかかわらずガソリン価格の上昇が続いているのがいい例だ。

この一方で、多くの民間専門家が、物価が上昇するほどの賃金上昇はないと日銀分析を疑問視している。毎月勤労統計で実質賃金を見ると、4月は前年比マイナス3・4%、5月もマイナス3・8%と、物価上昇分を賃上げがカバーできていないことを示している。

このほかの弱い指標では、アジア諸国の回復のもたつきもあって回復が遅れている輸出。5月に前月比でマイナス19・5%(船舶・電力を除く民需)と過去最大の減少幅となった、民間設備投資の先行指標となる機械受注統計などがある。

2回目の消費税率引き上げは、7〜9月までのGDPや諸経済指標で判断することになっているが、両者の開きがあるままでは、納得感の薄い増税となるだろう。

谷口正晃さん
Masaaki Taniguchi
産経新聞社経営企画室長。
経済部記者として流通、IT、総務省、日銀、財務省などを担当。シリコンバレー特派員、経済本部長などを経て現職。