生産が南アフリカに偏っているプラチナ。その南アフリカのプラチナ鉱山で過去最長のストライキが発生し、5カ月間生産が止まった。値動きが荒いとされていたプラチナ相場が、それでも上がらなかった背景とは…。

値動きの荒い

プラチナ相場が

比較的平穏だったワケ

プラチナは、工業用の需要が全体の65%を占める産業用メタルとして知られる。工業用は主に自動車の排ガス浄化装置の触媒として用いられるため、世界的に景気がよく自動車の販売が好調な環境のほうが価格上昇につながる。さらに鉱山生産量の72%が南アフリカに偏っているため、南アフリカの生産に支障が出ると需給が締まり、価格は上昇する傾向にある。

その南アフリカで、今年1月に主要プラチナ鉱山3社一斉の賃上げ要求ストライキが発生した。「月間の最低賃金を2倍超に引き上げよ」という鉱山サイドにとってとてものめるような条件ではなかった。交渉はこじれ、結局、終息宣言が出たのは開始からちょうど5カ月後の6月23日のことだった。この間のプラチナ価格は大きな反応を見せず、現物価格はスト開始時に1454ドル、終了時に1453ドル、この間の高値は1492ドルにすぎなかった。

プラチナは金に比べ市場規模が小さく、値動きが荒いことでも知られている。2008年の2月には、南アフリカで電力供給障害が発生し、鉱山生産が止まる可能性が高まった。その際にプラチナは急騰劇を演じた。年始の1541ドルから2カ月後の3月初めには2273ドルまで暴騰したのである。ただし、結末も派手だった。7月中旬まで2000ドル台は維持したものの、9月のリーマン・ショックを境に世界景気の先行きに不安が高まると、翌10月には763・80ドルまで暴落状態となった。こうした経緯を知る投資家にとって、過去最長のスト発生にもかかわらず、比較的平穏な状態が続いた今回の相場は理解しにくかっただろう。

反応しなかった理由のひとつに、2008年の相場の乱高下を教訓にしたうえで、不安定な労使関係からストの発生を予見した鉱山サイドと需要家である自動車メーカーなどが在庫を積み増していたことがある。さらに2008年は欧米の投資銀行などが自己資金で買いあおるような展開が見られたのだが、今やさまざまな規制がかかっており、当時のような過大な投機マネーの流入は見られなかったことが挙げられる。株式市場になぞらえれば、仕手化しなかったということだ。しかし、長引いたストライキが鉱山会社にダメージを与えたのは間違いない。不採算鉱山の売却や人員整理などによる需給の締まった環境は続き、この先の押し上げ要因となりそうだ。

亀井幸一郎
PROFILE OF KOICHIRO KAMEI
マーケット・ストラテジィ・インスティチュート代表。中央大学法学部卒業。山一證券、に勤務後、日本初のFP会社MMI、金の国際広報機関WGCを経て独立し、2002年より現職。市場分析、執筆講演など幅広く活躍中。

この記事は「ネットマネー2014年10月号」に掲載されたものです。