【漫画】ジョジョ、ゴルゴ、ワンピース…名作を盛り上げる「タバコシーン」の法則4

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マンガの作中で大人キャラ、クールなキャラの象徴ともいえる定番アイテム――“タバコ”。しかし単なる小道具にとどまらず、よく読んでみるとタバコが意外に重要なシーンを演出しているのをご存じだろうか? 今回はそんな“タバコが登場するシーンの法則”を調べてみた。

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■1 “信念を曲げない男”のシンボルとして

タバコをたしなむマンガ主人公として、まっさきに挙げられることも多い『ゴルゴ13』のゴルゴ13(デューク東郷)。世界のあらゆる国と地域で超人的な活躍をみせるマンガ史上最高のスナイパーだ。

愛煙家でもあるゴルゴは依頼者との待ち合わせ、狙撃ミッションの打ち合わせ中、移動中、また任務達成後の一服はもちろん、狙撃の現場にすらタバコを咥えながら登場するシーンが多数見られる。

気配を消さなければいけないスナイパーが煙や香りの出るタバコを愛用するのは合理的でないようにも思えるが、それもまた“ゴルゴの信念”の1つだとすれば矛盾はない。

彼が超A級プロフェッショナルとして「他人を背後に立たせない」「他人と握手をしない」「任務の秘密を漏らした者はたとえ依頼者でも抹殺する」など、厳しい信念(ルール)を設けているのはファンなら周知のとおり。

時にはこれが自分自身をピンチに追い込む原因になったりもするが、それでもゴルゴはかたくなに信念を貫き、最終的にはどんな任務だろうと達成してしまう。一見すると非合理的に思える“任務中にタバコを吸う”ことも、ゴルゴにとっては目的遂行のために欠かせないファクターなのかもしれないのだ。

ほかにも戦闘中にタバコを吸っているキャラクターは多く、古くは『コブラ』主人公のコブラから、近年なら『トライガン』のウルフウッド、『ONE PIECE』のサンジまで、いずれ劣らぬ千両役者ばかり。

それぞれ性格は異なるが、信念を決して曲げないという点は彼らすべてに共通している。そんな不屈のタフガイを演出するのに、タバコはとても適したアイテムと言えるだろう。

■2 キャラクターの心情変化を演出する

マンガの世界では、タバコ=大人のシンボル=冷静 という図式が成り立つためか、愛煙家のキャラクターはクールな役まわりが目立つ。そこをうまく逆手にとり、キャラクターの感情を表現するのにもタバコは役立っている。

これが効果を発揮したのが、『ジョジョの奇妙な冒険』第2部のワンシーン。ある大切な仲間が死亡したさい、主人公(ジョジョ)の師匠であるリサリサが動揺のあまりタバコを逆さに持ってしまう。

それを弟子のジョジョから指摘されたリサリサは、いつもの沈着冷静なイメージを完全に失って泣き崩れる。ファンからの評価も高い、タバコがキーになった印象的なシーンだ。

灰が足の上に落ちているのに気づかない、手が震えてうまく火がつけられない、怒りのあまり根本から噛みちぎってしまうなど、タバコはいろいろなシーンで読者に“キャラクターの心情変化”を伝えてくれる。

■3 キャラクター同士の親密度を表現する

愛煙家のキャラクターがふたり以上いる場合、タバコをうまく使うことでお互いの親密度を表すことができる。いわばタバコがコミュニケーションツールの役割を果たすのだ。

キャラクターの関係をタバコで完璧に描いたとして評価されているのは、人気ガンアクション作品『ブラックラグーン』のワンシーン。元商社マンで運び屋に転職したばかりの主人公ロックは、荒っぽい性格なヒロインのレヴィと当初は意見が合わず、殺し合う寸前にまで衝突する。

結局はお互いに本音をぶつけ合って和解するのだが、騒動直後の車内で2人が一服するさい、ロックがレヴィに自分の咥えたタバコから火を移してやるシーンがすばらしく官能的だった。

服を着たまま体の接触もなく、タバコを通じた短いやりとりだけで“マンガ史上屈指のラブシーン”を描いた作者の実力は見事。ちなみにこの直後から、ロックとレヴィは互いに信頼しあったベストパートナーとなり、まさにタバコの火移しシーンが物語のターニングポイントになったわけだ。

こうした表現は男女のキャラクターに限ったことではなく、たとえば劇場版アニメ『ルパン三世 ルパンVS複製人間』にも興味深いシーンがある。ルパン一行が敵の大型トレーラーに追いかけられている最中、運転席でタバコを欲しがるルパンに、助手席の次元大介が自分の咥えているタバコを吸わせるのだ。

たった10秒にも満たないシーンだが、生死をかけた極限状態でもタバコの“回し吸い”を自然とやってのける彼らからは、長年かけて築き上げた強い絆が感じられた。

■4 キャラクター、作者のこだわりを表わす

ひとつのシーンを切り出すだけでなく、マンガ全体を通して見た場合にも、タバコの果たすユニークな役割に気づくことがある。どんなタバコを吸っているかで“キャラクターの個性”を出すという試みを、意外に多くのマンガ家がやっているのだ。

たとえば『ゴルゴ13』はキャラクターの多くがタバコを吸うが、よく見ると若者は一般的な紙巻きタバコ、こだわりのある者は葉巻(ゴルゴも葉巻派)、年配になるとキセルやパイプ……などキャラクターごとに愛用するタバコの種類が違っている。

『ブラックラグーン』では、同じ紙巻きタバコにしても各キャラクターが別銘柄を吸っているという見事なこだわり具合。人気マンガ家の福本伸行氏もタバコにはこだわるようで、『カイジ』『アカギ』『銀と金』『最強伝説黒沢』など作品ごとの主人公にはそれぞれ別銘柄のタバコを吸わせ、さらに同じキャラクターでも時期が違えば銘柄を変えるなど、芸の細かいタバコ描写がなされている。

タバコへのこだわり描写は作者の自己満足に終わることなく、ファンサービスにもなっているのが愉快なところ。ネット上では各作品のファンが「このキャラクターはこの銘柄を吸っていた」と情報を持ち寄り、あれこれ議論しながら楽しむ様子が見られる。


このように、普段は小さなコマの中で見落としがちなタバコというアイテムだが、実はマンガ作品内で多くの役割を果たしている。皆さんもたまにはページをめくりながら、名シーンの中にある“名脇役”の存在に注目してみても面白いかもしれない。