劣勢を強いられたなかで唯一の決定機となるシュートを放った矢島だが、相手GKの好守に阻まれた。(C) SOCCER DIGEST

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 試合後のミックスゾーンで、それまではどちらかと言えば淀みなく記者の質問に答えていた印象だったが、その質問を受けた瞬間、少しだけ言葉を詰まらせたように見えた。声のトーンもやや低かった気がする。
 
 悔しさを滲ませながら、矢島慎也は言葉を紡ぎだす。
「まあ、疲れているなかでも、あそこで試合を決められるかっていうところで、やっぱり自分はダメというか……。1点を決めておけば、というシーンでした」
 
 日本の唯一の決定機は、0-0で迎えた77分。室屋成の右クロスがDFに当たり、そのこぼれ球に反応した矢島が、右足で丁寧にミートさせてボレーを放つ。鋭い軌道でボールはゴールへと向かったが、相手GKのファインセーブに防がれてしまった。
 
「あれは決めないと。わりとコンパクトに振って、それでドライブみたいな回転で、GKの頭上を越しながら決める形が理想だったんですけど」
 
 このプレーで矢島は右足を攣ってしまい、途中交代を余儀なくされている。
「その前に、ジャンプした時にちょっと違和感があったんですけど、あのシュートで伸びきってしまいました」
 
 この日は4-2-3-1の2列目の左サイドで先発した矢島は、前半から攻守にわたって献身的に走り回り、存在感を放っていた。9分には遠藤航の縦パスを受けてミドルを放つなど、相手のギャップを突いたポジショニングでボールを引き出し、いくつかのチャンスに絡んでいた。もっとも、守備面での奮闘が矢島の身体を疲弊させていたのも確かだろう。
 
「左サイドで作られて、相手のSBも高い位置を取って、そのままドリブルで持っていかれるシーンが多かった。僕も守備の位置を、もう少し外側にとってもよかった。(ダブルボランチの)大島君と航君が右にスライドした時にできる横のスペースがけっこう怖かったので、そのスペースに対して絞り過ぎた。だから、自分のサイドを使われたのかなと思いますけど、もう少しいいポジショニングができたかな、と」
 
 上下動だけでなく、中央とサイドのスペースケアに奔走した。内に絞りつつも、外に展開されては、そのたびに全力でボールを追いかけ、懸命なディフェンスで対抗した。しかし、矢島だけでなくチーム全員の健闘も及ばず、PKによる失点で日本は開催国の韓国に敗れ、準々決勝で大会を去ることとなった。
 
 ベスト4の壁――。アジアの舞台で、この世代はどうしてもその先に進めずにいる。今年1月のU-22アジア選手権ではイラクに敗れた。さらに過去を振り返れば、2年前のU-19アジア選手権でも、同じくイラクの前に屈してベスト4進出はならず、U-20ワールドカップの出場権を逃している。
 
 そして今回は、韓国という隣国のライバルにアジア4強への道を閉ざされてしまった。三度目の正直とはならなかったわけだが、そのすべての悔しさをピッチに立って味わっている唯一の選手が、他でもない矢島である。
 
「(所属クラブで)試合に出られるのが一番ですけど、それができなければ、自分で課題を見つけながら、一日一日を無駄にしないよう、日々努力しなければいけない。それはオマーンの時(U-22アジア選手権)とか、もっと前で言えば、U-19の最終予選の時からも気づいていることなので。そして今日も勝てませんでしたが、まだまだ努力が足りないということ。試行錯誤しながら、もっと良くしていかなければいけないと思っています」
 
 何度倒されても、諦めずに顔を上げて、前だけを見据えて進もうとする。もしからしたら、次もまた負けるかもしれない。勝てる保証などどこにもないが、それでも矢島は言う。「ここで止まるわけにはいかないですから」と。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)