1ヶ月の電気代が「190円」! 電気に頼らない生活とは

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 独り暮らしの1か月の電気代がなんと「190円」。信じられないかもしれないが、電気料金の契約アンペアを一番最小の契約(5アンペア)に変更し、エアコン、電子レンジなどを使わないで生活すると、この「190円」は実現するのだ。

 『5アンペア生活をやってみた』(斎藤健一郎/著、岩波書店/刊)は、電気に極力頼らない暮らしをするべく、身の回りにあふれる電化製品と決別した新聞記者の斎藤健一郎氏が試行錯誤の末に辿りついた本当に豊かな生き方を紹介する一冊だ。

 朝日新聞社に勤める斎藤氏は、ごく普通の生活を送っていた。しかし、2011年3月、東日本大震災と原子力発電所の事故の発生によって原発被害取材の担当となり、そのことが大きなきっかけとなって、2012年7月に節電生活を始めることになる。

 5アンペアの電気契約とは、普通の暮らしはかなり難しくなるレベルだ。掃除機も電子レンジもエアコンも使えない。ただし、電気を使わなければ0円、基本料金は一切かからない。

 当然、夏はエアコンなしで過ごすことになる。斎藤氏が住む、都心の住宅密集地のマンションの1室は、梅雨も去った7月に入ると室温は遠慮なしに上がる。エアコンが使えない状況での頼みの綱は風。しかし、部屋を取り囲むように立ちはだかる家々に阻まれているのか、少し離れた巨大ビル群がついたてになっているのか、都心の真ん中にある部屋には、ほぼまったくといっていいほど、風は入ってこなかった。

 自然の風がダメならば、人工の風だ。予想に反して大活躍したのが扇風機だった。どこまで暑くなると、ヒトは立ってもいられなくなるのか。斎藤氏の経験からいうと、その境は30度。室温が30度を超えてくると、体は熱気をはらみ、ちょっと体を動かすと体を冷やそうと調整機能が働いて、汗が噴き出てくる。そんな中、扇風機の風をいくら吹かせても、室温自体が30度から27度、25度と下がっていくわけではないが、体が感じる暑さは劇的に軽減する。斎藤氏は夏の間、ほとんどの時間を扇風機とともに過ごすことになったのだった。ちなに消費電飾は、実測の結果、弱風で0.3アンペアなので、エアコンよりはるかに優れているという。

 冬も当然、エアコンなし。掃除機や電子レンジ、電気炊飯器を使うのもやめ、さらには冷蔵庫の電源も切る。電気をほとんど使わない暮らしを斎藤氏は苦労も含めて楽しんでいた。次々と家電を手放す代わりに、古き良きものに出会い、自分の技術や感覚を磨く。できないところを探してやらないのではなく、できるところを見つけて、やって楽しむことが、5アンペア生活の快楽なのだという。

 異常気象と呼ばれる近年、エアコンなしで夏を乗り切ろうとすると、熱中症の危険性が高まるので注意が必要だ。しかし、この5アンペア生活は、普段の生活で参考にできる部分は多いはず。興味のある人は実践してみてはどうだろうか。
(新刊JP編集部)