ミスのないパスさばきと堅実なポジショニングで、中島は日本の大勝を演出したひとりだ。 (C) SOCCER DIGEST

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 決して派手なプレーヤーではない。自分だけしか持ちえないストロングポイントがあるわけでもない。ただ、安定感は抜群だ。中盤のサイドでもセンターでも、及第点以上のパフォーマンスでチームを機能させられる中島依美は、様々なタイプのチームメイトともスムーズに連係してみせる。そして何事にも動じない冷静さで淡々と効果的なプレーを連発する。
 
 準々決勝の香港戦で、佐々木則夫監督は大幅にメンバーを入れ替えた。負ければそこで終わりの一発勝負だが、日本と香港の実力差は明らかで、宮間あやや阪口夢穂など主力を温存させた指揮官は、今後の代表定着にアピールが必要な選手を優先的に先発起用。中島もスタメンに名を連ねたひとりだった。
 
 試合は序盤から日本がペースを掴み、3分には川澄奈穂美のクロスを起点に、最後は増矢理花がヘッドで押し込んで難なく先制点を奪う。10分にはオウンゴールで加点。その4分後、日本はゴール正面でFKのチャンスを得る。キッカーは中島。思い切り右足を振り抜き、放たれたボールはDFに当たって微妙な変化が加わり、相手GKのキャッチミスを誘ってゴールに吸い込まれた。
 
 正確なキックには定評がある。この日はほとんどのプレースキッカーを務め、76分にはCKから菅澤優衣香のゴールをお膳立てした。
 
 終わってみれば9-0と圧勝した日本だったが、人数を割いてゴール前を固める相手に手を焼いたのも事実だ。ボランチを任された中島は、「アイデアが少し足りなかったのかなと感じました。ワンツーとかもあまりなかったし、センタリングから点が取れたのは良かったですけど、もっと工夫できたのではないか」と反省を口にする。
 
 とはいえ、前日練習でも取り組んでいたサイドチェンジで相手を揺さぶりにかけ、攻撃の糸口を懸命に作り出しては、チャンスメイクに貢献。ダブルボランチでコンビを組む猶本光との関係性では、「サイドからのクロスが多いなか、どちらかが前に行って中の枚数を増やしたかったので、猶本を前めにして、自分がバランスを取った」と、狙いを説明した。
 
 素早い攻守の切り替えなどディフェンスにも奮闘し、チームメイトがいい状態でプレーできるような環境作りに力を注ぎながらも、決定的な仕事にも絡んでみせる。増矢の代表初ゴール、負傷離脱していた郄瀬愛実、菅澤の復帰弾、岩清水梓の完璧なミドルシュートなど、特筆すべきトピックに事欠かなかった香港戦だったが、献身的な姿勢で全体をオーガナイズした中島の安定感溢れる仕事ぶりもまた高く評価されていいはずだ。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)