米ツアー参戦9年目となる宮里藍。もしかすると、今季の戦いは早々に終わってしまったかもしれない。

 先に行なわれたヨコハマタイヤ・クラシック(9月18日〜21日/アラバマ州)では、久しぶりに好調だった。2日目を終えて通算4アンダーの16位タイ。3日目にもふたつスコアを伸ばして、12位タイと順位を上げた。宮里自身、「上位というより、優勝争いに加わっていきたい」と意気込んでいた。が、最終日は今季の宮里を象徴するかのように、グリーン上で苦戦。結局、スコアを伸ばすことができずに通算6アンダー、27位タイに終わった。

 結果、大会終了時点の今季賞金ランキングは、83位にとどまった。この順位は、10月以降、舞台をアジアに移す米ツアー(計6戦)には出場できないことを意味する。各大会の出場者数が開催国のツアー選手(15〜35名)を含めて、トータル70〜80名と少なくなるからだ(賞金ランク上位選手の中から数多くの棄権者が出れば、出場の可能性はあるが......)。さらに、今後試合に出られない宮里は、CMEポイント上位72名が参加できる(宮里は81位)、今季最終戦のCMEグループ・ツアー選手権(11月20日〜23日/フロリダ州)出場もほぼ絶望的。したがって、冒頭に記したとおり、米ツアーにおける宮里の今シーズンは、このまま終わる可能性が高い。

 宮里もその点を理解してか、ヨコハマタイヤ・クラシックを終えて、こう語った。

「なかなか苦しい1年だったと思う。シーズンを通して、思いのほか、パッティングに苦しんでしまった。予定としては、もっと早い段階で自分のパットができるようになると思っていた。でも、やっぱりゴルフはなかなか簡単ではないですね」

 宮里が今季、ずっと不振にあえいでいた最大の要因は、本人が語るとおりパッティングの不調にある。彼女のゴルフにとっては、"要"となるものだ。決してロングヒッターではない宮里が、米ツアーで世界の強豪相手に互角以上に渡り合えたのは、正確なショットとショートゲーム、そして勝負どころできっちり決められるパッティングがあったからに他ならない。その"生命線"に支障をきたしては、さすがの宮里も好結果は望めない。

 パッティングに狂いが生じたのは、ちょうど1年前。昨秋、日本ツアーに参戦したときだった。その際、7年ぶりにパターを変えると「(パッティングの)フィーリングが変わってしまった」。それが、原因だった。すぐにもとのパターに戻したものの、そのときに染みついた「(パターを)押し出す、嫌な感触」が、いつまでも手に残ってしまった。

 その感触を払拭(ふっしょく)し、元のフィーリングを取り戻すことが、今季最大の課題だった。

 以前、ドライバーの不調からスランプに陥った宮里。その経験から彼女は、「ドライバーのときと同じように、今回も時間がかかると思う」と語ったが、はたから見ている者としては、ドライバーのほうが修正は困難で、パッティングの調子はすぐに戻るだろうと楽観視していた。しかし、その考えは誤っていた。

「練習グリーンでは問題ない。プレッシャーのかかったときだけ、(いいフィーリングで)打てなくなってしまう。だから、実戦で試したいんです」

 宮里はそう言って、体調が思わしくない中でもシーズン序盤から試合に出続けたが、一向に調子が上がる気配はなかった。パットが決まらず、上位に顔を出すことはほとんどなかった。全米女子オープン(6月19日〜22日/ノースカロライナ州)までの前半戦は、米ツアー12試合に出場し、最高位は3月のキア・クラシック(3月27日〜30日/カリフォルニア州)の24位だった。

 コーチを務める父・優さんからもアドバイスを受けて、「テイクバックを少し小さくして、トップからスピードを加速していくこと」など、シーズン中でも技術的な修正をずっと繰り返していた。普段は「量より質」という練習スタンスをとっていたが、一時は「このストロークを、体がしっかりと覚えるまでやろう」と、通常の2倍近い時間を費やして練習に没頭することもあった。

 それでも、なかなか結果には結びつかなかった。7月のマンソンクラシック(7月17日〜20日/オハイオ州)では今季最高の12位タイという成績を残したが、その後は再び苦悩の日々が続いた。連続して予選落ちを喫すると、「来季のシード権が危うい。そんなことを心配するのは生まれて初めて」と、珍しく弱音を吐くこともあった。

 そうして、事態は劇的に変化することなく、実質的に宮里の今シーズンは終わりを告げようとしている。だが、ここ1カ月ほどは自らに言い聞かせるように、「あともうひと踏ん張り」という言葉を繰り返して奮闘。自分のストロークを徐々に取り戻しつつあるようで、1試合に1日はパッティングが決まる日が出てきていた。

「(今季は)普段とは違うプレッシャーとストレスをずっと感じていた。日々、それとの勝負で、それらをどう自分の中で処理してプレイできるかが、毎週課題だった。でも、この1カ月くらいは(米ツアーでも)十分に戦えるだけのパットが戻ってきている」

 最後の最後になって、確かな手応えを得た宮里。来季へと希望をつないだ。

 さて、心配される来季のシードについてだが、賞金ランクによるシード権獲得(80位内)はもはや難しいだろう。ただし、2012年に2勝を挙げていることから(年間複数回優勝の資格)、来季の米ツアーには出場できる。そのため、宮里の視線ははや来季を見据えて、このあと日本ツアーでのプレイも考えているという。

「今季はかなりエネルギーを使ったので、少しお休みしたいな、というのが正直なところ。でも、今の流れをうまくキープしていけるようにしたい。これからゆっくり考えますが、もし日本でプレイするなら、推薦が必要。(各関係者に)早めにお願いしなければいけないな、と思っています」

 宮里は、この1年の苦しい時間を「すごくいい経験」と笑って振り返った。しかしその笑顔の裏には、我々が想像もできないほどの苦労が隠されている。できることならその苦労を糧にして、来季再び宮里が飛躍してくれることを期待したい。ドライバーのスランプから脱出したあと、世界の頂点まで駆け上がった姿を再現し、心の底から笑っている彼女を見たい。

武川玲子●文 text by Takekawa Reiko