記者の質問に答える増矢。「早く1点が欲しい」と胸の内を明かす。(C) SOCCER DIGEST

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 佐々木則夫監督が大きな期待を寄せているストライカーだ。
 
 JFAアカデミー福島出身で、2012年のU-17女子ワールドカップに出場し、ブラジル戦で2ゴールを挙げるなどの活躍を見せて8強入りに貢献。今季からINAC神戸に加入し、開幕2戦目でスタメン出場を果たすと、3戦目には2ゴールを決めてチームを今季初勝利に導いた。なでしこリーグでは、早くも能力の高さを存分に見せつけている。
 
 そして、今回のアジア大会でなでしこジャパンに初招集され、大会直前のガーナとの親善試合で先発に抜擢されるなど、さらなる飛躍へのステップを着実に刻んで今大会に臨んだ。
 
 初戦の中国戦と3戦目のチャイニーズ・タイペイ戦に先発、2戦目のヨルダン戦には途中出場した。しかし、グループリーグ全3試合でピッチに立つも、ひとつのゴールも奪えなかった。チャンスがなかったわけではない。チャイニーズ・タイペイ戦では15分、18分と立て続けに決定機を迎えたが、ネットを揺らせなかった。とくに悔しく思っているのが、3戦目のノーゴールだ。
 
「(チャイニーズ・タイペイ戦は)得失点差がすごく重要で、ゴールを決めるか決めないかで、1位通過か2位通過がかかっていた。そういう試合でしっかりと決めなければいけなかった」
 
 この試合では、本来のFWではなくサイドハーフで起用されたが、佐々木監督は「ちょっと守備の部分でバランスが悪かった」と指摘している(途中からFWに移動)。本人も「サイドハーフをやって、戸惑うところがありました。自分の守備に行くタイミングが悪くて、後ろもいつ、どこで取りに行くのかも分からなかったと思う。自分もナホさん(川澄奈穂美)みたいに、守備のスイッチを入れられるようにしたい。それはどこのポジションでも一緒だと思っています」と反省しきりだった。
 
 本人は「守備の課題ができた」とグループリーグを振り返る。もっとも、本職の攻撃に関しては、ゴールこそなかったものの、バイタルエリアでの仕掛けやチャンスメイクでは、持ち味を十分に発揮していた。
 スコアレスドローに終わった中国戦の増矢のパフォーマンスについて、佐々木監督は「より前を向いて、タメを作れれば、もっとチャンスはあったと思うが、逃げずにチャレンジしたことは非常に良かった」と評価している。たしかに、中国戦に限らず、相手に囲まれてボールを奪われ、流れを切る場面はあったが、アグレッシブな姿勢を最後まで貫き、試合中に先輩たちから厳しく注意されても、臆せず懸命にゴールを狙い続けた。
 
 自身のプレーを振り返って、「まだ全然です。すごく混乱してしまう時があるので」と深く反省しつつも、「前めのポジションだし、取られたら取り返せばいい。いつも、そんなに落ち込んでいる暇はないって思いながらプレーしています」と、とにかく今はガムシャラに戦っている。
 
 代表4試合目にして初のフル出場を果たしたチャイニーズ・タイペイ戦後、指揮官は「彼女はスタミナがあるし、まだまだ動ける要素があったから」と最後まで使い続けた意図を明かし、そしてこうも言った。
「あいつに1点、取ってほしいね。まあ、時間の問題だと思うけど」
 
 守備はまだまだだ。ゴール前での冷静さも少し足りない。組み立てに力を使い過ぎているところもある。取り組むべきことは多いが、「でもやるべきことははっきりしているので。ひとつずつこなしていくだけです」と、19歳の新星は意欲を燃やしている。
 
 壁にぶち当たっている現状を打破するのに必要なのは、やはりゴールだろう。そのことは本人も重々承知している。
「チャンスは何回も来ているので、あとは決めるだけです。1点入ると、調子もどんどん上がっていくんじゃないかなと思う。そういう意味では早く1点が欲しいです」
 
 準々決勝の相手は、佐々木監督が「非常に難しい相手」と言う香港に決まった。難敵を相手に欲しかった結果を手に入れ、チームの勝利に貢献することで、自らの存在価値を証明したい。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)