数分前まで元気だったのに--そんな人が突然倒れ、そのまま帰らぬ人に。“突然死”ほど、家族や周囲の人に悲嘆とショック与える事件はない。
 8月29日、大相撲元小結でタレントの龍虎さん(本名・鈴木忠清)が家族との旅行先で突然心肺停止に陥り、病院で死亡が確認された(享年73)。死因は循環器疾患・心筋梗塞。この病気は本来、急激な胸の痛みを覚えるものだが、逆にまったく胸の痛みや前触れがなく突然死に至るケースも多いといわれる。いったい、どんな人が罹りやすいのか、事前の防止策はあるのだろうか。

 9月4日、5日、東京・目黒区の斎場で、龍虎さんの葬儀・告別式がしめやかに営まれ、当日は相撲界、芸能界などの友人、知人ほか関係者700人が参列し故人を偲んだ。
 龍虎さんは先月29日朝、妻の貴子さんと長男、長女の3人の家族とともに、静岡県掛川市の事任八幡宮を訪れ、社務所で関係者と談笑後、271段の階段の上にある社へ向かって登る途中で倒れたという。長女が社務所に戻り通報、救急搬送されたが、既に心肺停止状態だった。
 この状況を目の当たりにした関係者は「ほんのついさっき前まで本当にお元気そうだったので、亡くなったことが信じられない」と語っていた。

 龍虎さんの死因は、心筋梗塞の前に「循環器疾患」が付いているが、これは通常「心臓血管系の疾患」ともいわれるもので、急性心筋梗塞、不安定狭心症の起因となる病気だ。
 東京多摩総合医療センター循環器科・清水泰樹医師はこう説明する。
 「突然死の原因の6割が心臓からきていると言えます。近年の傾向として、こうした心臓病の若年化が見られ、今後は、心臓病の割合が癌を超えるのではないかとみられているほどです。これは生活様式の変化に伴い、肥満や糖尿病、脂質異常症などの疾患が増えてきているためで、肥満や糖尿病が増え続ければ狭心症や心筋梗塞など、虚血性心疾患を誘発するリスクが高まるからです。龍虎さんも以前にクモ膜下出血などの病気を経験されているとのことですので、高血圧、糖尿病など、生活習慣病との関連も考えられると思います」

 一般的に心筋梗塞というと“心臓を素手で鷲掴みにされ、ねじられた感じ”といった激しい胸の痛みをイメージする。ところが、胸の痛みがまったくないものもあり、知らぬ間に心筋梗塞を起こして突然死するケースが増えているという。
 そんな体験者の一人、斉藤隆さん(仮名=58)は、先月、職場の仲間と昼食中に“めまい”に襲われた。
 しばらくして症状は治まったが、今度は胃がムカムカしてきて食べ物を戻してしまった。悪寒を感じた斉藤さんは「風邪でも引いたのか、食べ物に当たったのだろう」と思ったが、念のため病院へ行くと、診断結果は心筋梗塞だった。
 「胸に痛みのない心筋梗塞は無症候性心筋梗塞といって、近年増えています。急性心筋梗塞で亡くなる人は年間4.2万人ほどですが、これとは別に年間1万〜2万人が、自分でも気づかないまま心筋梗塞を起こして突然死という不幸な事態に直面しているのです」(前出・清水医師)