あまりにも早すぎると顔をしかめるべきなのか、それとも清々(すがすが)しいと称(たた)えるべきなのか。

今年7月の新弟子検査で合格基準の67kgまで4kg足りず、体重を量る前におにぎり4個、うどん2杯、水3リットルなどを無理やり胃に収め、なんとか合格にこぎつけた相撲界最軽量力士の育盛(そだちざかり)(17歳・式秀[しきひで)部屋)。

相撲好きが高じて角界入りしたものの、翌場所番付にしこ名を載せるための前相撲でさえ、一番相撲が1秒、二番相撲が2秒で土俵外に吹っ飛ばされる始末。その負けっぷりのよさが話題となり、多くのファンがこの秋場所での序ノ口デビュー戦に注目していた。

ところが、その記念すべき初土俵に育盛の姿はなかった。師匠の式秀親方(元幕内・北桜)が秋場所初日の前日(9月13日)に引退届を提出し、不戦敗となってしまったのだ。結局、育盛は力士人生約2ヵ月、通算成績0勝1敗で相撲界を去ることになった。

育盛は前相撲での敗戦について、「1秒で負けることは恥ではない」「腐らず、逆境をバネにあっと驚く相撲を取れるようになる」と、自身のツイッターで前向きにつぶやくなど、序ノ口デビューへ向け、稽古に励んでいたはず。

それが、なぜ一度も戦うことなく、土俵人生に幕を下ろすことになったのか? 大阪府枚方(ひらかた)市にある実家を訪れ、父親に引退のワケを聞いてみた。

「ひと言でいえば、体力の限界だったということです。8月までは元気でやっていました。ところが9月になって、それまでの疲れが一挙に出たのか体調を崩してしまったんです。それで枚方の実家に一度戻ることになりました。そこで毎晩のように家族会議を開いて話し合った結果、このまま引退しようということになったんです」

―体調不良とは?

「秋場所までに70kgに体重を増やしたいと稽古をしていたんですが、太るどころか、逆に58kgまで痩せてしまったんです。本人は『相撲を続ける』と譲りませんでしたが、親としてはあの小さな体で力士を続けるのは無理だと感じていました。それで『このへんでもう(辞めても)いいんじゃないか』と伝えました。最後には息子も冷静になって考えたようで、引退に同意してくれました」

―息子さんのチャレンジは無謀だった?

「たった2ヵ月でしたが、息子はようやったと思います。普通なら、あの小さな体での入門自体があり得ませんから。でも、息子はあきらめなかった。通信制の高校に転校したり、新弟子検査で水をがぶ飲みしてまで、力士を目指したんです。息子は持てる力を出しきってがんばった。親としてはホメてやりたいと思っています」

―ネット上では「いじめが原因で引退した?」との書き込みもあるようですが。

「いじめはありません。体重さえ増えていたら辞めることはなかったはずです。実家でも式秀部屋での楽しかった思い出ばかりしゃべっています。この秋場所も、テレビの前で式秀部屋の力士を懸命に応援しています。自分の相撲の道が閉ざされた分、兄弟子たちには活躍してもらいたいと考えているようです」

一部には、あまりにも早い引退に目くじらを立てる向きもあるようだが、そのチャンレジ精神は称えるべき。相撲取りになる夢は破れたけど、育盛ならきっと人生の次のステージでもっと大きな夢をつかめるはずだ。頑張れ、育盛!

(取材/ボールルーム)