韓国の仁川(インチョン)で開催されているアジア大会。現地に取材に出かけた人はホテルを予約する際、「アジア大会料金」に設定されたその高い値段に頭を抱えていた。

 聞くところによれば、普段の倍ぐらいだという。その普段にしても、韓国には、外国人には韓国人より高い値段で泊まらせようとする習慣がある。韓国人用の値段を知ると、ボラれてしまったような、納得できない気持ちにさせられる。

 日本で、○○料金と言われた時、頭を過ぎるのは正月料金だ。これは確かに高い。正月に観光地に泊まろうとすれば、それなりの覚悟が必要になる。お盆料金、GW料金もしかり。だが、宿の値段を左右するのは、あくまでも暦だ。イベントでつり上がったというケースはあまり聞かない。

 2002年日韓共催W杯でも、通常より3割から5割ほど高かった韓国に対し、日本はほぼ通常。特別高いと感じたことはなかった。そのことに感激も感動もしなかった。日本を訪れた外国人観光客が決まって驚くのは、電車が時間通りに動くことだが、それと同じで、あまりに当たり前すぎて、そう言われてもピンと来ない人は多いと思う。

 だが、日本と韓国、どちらが世界のスタンダードに照らして、普通かと言えば韓国になる。日本はそのことに関して、良い意味で特異なのだ。 

 五輪、W杯、ユーロ、チャンピオンズリーグ決勝等々のスポーツイベントに、僕は職業柄、出かけていく頻度が高いが、その経験で言えば、通常料金はあり得ない話になる。正月料金程度で済めば御の字。5倍、6倍は当たり前。ここぞとばかり、思い切り料金を上げてくる。スポーツイベント取材には莫大な旅費経費が掛かるのだ。

 最近ではブラジルW杯。一泊2万円以内で収まれば御の字で、日本がコロンビアと戦ったクイアバでは、普段、一泊4、5千円程度のホテルが、10倍近い値段に跳ね上がっていた。まさに、ぼったくり。そうした覚悟ができていない日本人には、なおのことそう感じる。 

 海外取材で、現地のホテルに通常料金で泊まることができる機会の方がむしろ少ないくらいだ。

 スポーツイベントに限った話ではない。学会、見本市、最近ならミュンヘンのオクトーバーフェスト。需要と供給のバランスが、売り手市場になると、外国は、値段をえげつなく、底なしにつり上げようとする。

 外国の一番嫌いな所といってもいい。外国の良いところを見ようとせず、日本の良いところばかりを探そうとする行為が、僕にはあまり好きになれない。自分を目一杯褒めているようで気持ち悪いのだけれど、この問題については、さすがに一言、触れておきたくなる。思い切り胸を張っていいポイントなのだ。

 だがこれは、日本人にとっては、当たり前の話。胸を張るポイントだと思っている人は少ない。世界との常識の違いに気付いている人はそう多くいないのだ。外国人旅行者もしかり。よほどの日本通でない限り、そこに引っかかりを覚えることはない。
「お・も・て・な・し」の精神とそれが、どう関係しているか定かではないが、おもてなしの具体的な手段になることは確か。世界の人への訴求力は十分にある。僕が2020年東京五輪の仕事に携わる人間なら、真っ先にアピールしているだろう。

 日本国内のホテルは、五輪期間中も前後も、通常料金で営業します。値上げは一切致しません――と、世界に向けて宣言すれば、多くの人の耳にとまること請け合いだ。日本では当たり前のことが、世界の人には喜ばれる。このいい意味でのギャップを、五輪観光のカードとして活かさない手はない。
 
 ただでさえ、物価が高そうなイメージがある日本。それとこれは真逆に位置するモノになる。それだけに効果は期待できる。良心をアピールすることもできる。イメージアップにも繋がる。

 日本を訪れる観光客は、それをアピールするのとしないのとでは大きく違う。僕はそう確信している。