【うちの本棚】230回 ラストシーンはまだはやい/奥友志津子

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 「うちの本棚」、奥友志津子の単行本から『ラストシーンはまだはやい』を取り上げます。

 個性的なキャラクター、銀子を主人公としたシリーズ作品です。

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ラストシーンはまだはやい

 本書は秋田書店の「ボニータ」に掲載された作品を集めたもので、銀子という女性が主人公のシリーズだ。初出に関しては詳細が調べきれなかったので省略した。
 カバー折り返し部分の作者のコメントには、銀子がどのように変化していくのか、そこまで描いてみたい、とも書かれている。とはいえ、個人的にはこの銀子というキャラクターは、星子の成長した姿のような印象もあって、星子から銀子へとすでに変化していたのではないかという気がする。さらにどう変わっていくのか、というのが作者としての興味だったのだろうか。

 収録されているのは4話のエピソードだが、連続した物語で、一冊の長編と捉えてもいいだろう。最初から連作として描かれたようで、1話目の『とてもメタフィジカルな午後』は銀子というキャラクターの紹介で終わっている印象もある。読み終わってみると、なるほど作者がこのあと銀子がどのように変化していくのかについて言及していることにも納得できる。というより、少し描き足らない気分だったのではないだろうか。

 未読の方に少し説明しておくと、銀子は哲学を専攻する女子大生。大樹という彼氏がいるのだが、付き合ってはいても男女の関係にはない。それでいて住んでいたアパートを追い出されたという理由で、大樹の部屋に居候してしまう。性格がひねくれていて、さほど美人でもない銀子だが、大樹の方は美術を専攻していてそれなりのイケメン。これまでに付き合った女性の数もそうとうのようだ。が、なぜか銀子に本気で惚れてしまって逆らえない。そんなふたりの生活を中心に、銀子の兄や大樹の弟、さらには大樹の元カノ、銀子の婚約者といった人物たちが現れてストーリーは進んでいく。

 星子のシリーズに関して、清原なつのの「花岡ちゃん」シリーズに言及したが、今回の銀子はビジュアル的にも「花岡ちゃん」に近づいた印象もある。おかっぱ頭に眼鏡、さらには哲学専攻と来れば、まさに「花岡ちゃん」だろう。このあたり、奥友がどの程度意識していたのか聞いてみたいところだ。

書 名/ラストシーンはまだはやい
著者名/奥友志津子
出版元/秋田書店
判 型/新書判
定 価/370円
シリーズ名/BONITA COMICS
初版発行日/昭和61年4月10日
収録作品/とてもメタフィジカルな午後、夜の銀子さん、ラストシーンはまだはやい、おおかみたちの定義

(文:猫目ユウ / http://suzukaze-ya.jimdo.com/