9月特集 アジア大会2014の発見!(8)

 なでしこジャパンがアジア大会でグループリーグ1位突破を果たした。一見、結果としては目標通りのステップである。しかし、内容は問題が山積。大会2連覇への道が険しいことを改めて感じさせるグループリーグの戦いだった。

 2勝1分、2位の中国に勝ち点で並ぶも得失点差で6の差をつけ、首位で決勝トーナメント進出を決めた。1位通過でなければならないのには訳があった。2位通過となれば、アジア一番の強敵と言って過言ではない北朝鮮と決勝トーナメント一回戦(準々決勝)で対戦することになる。まだまだ未熟な現在のチーム状態で当たるには分が悪すぎる。できれば準々決勝、準決勝と、わずかでも経験を重ねてから決勝の舞台で対峙したい相手なのだ。

 グループリーグの戦いは初戦の中国戦が最大の山場だった。しかし、チームが発足してまだ1週間。しかもメンバーが大きく入れ替わり、チーム作りはゼロからのスタートだ。0−0という結果も致し方ないことなのかもしれない。

 結果、このドローでグループリーグの戦いは勝敗ではなく、ゴール数勝負になってしまった。このチームを牽引する宮間あや(湯郷ベル)、川澄奈穂美(INAC神戸)、阪口夢穂(ベレーザ)らが意地を見せたのが、続く2戦目のヨルダン戦だった。結果は12−0。ヨルダンは発展途上のチームで、約2年間チームの指揮をとる沖山雅彦監督は元JFAアカデミー福島の指導者だ。まっさらな人材を育成する力には長(た)けている。対する日本は、引いてしまう相手に対し、いかに崩すかが最大の注目点だった。

 ここで攻撃力を印象づけたのはFW菅澤優衣香(ジェフ)とともにハットトリックを達成した阪口だった。特にセットプレイでは、新たな手法も編み出した。それを「突然思いついた」(阪口)のは、20分のコーナーキックのチャンス時だった。通常はバラけて宮間からのボールを待つ攻撃陣だが、突然阪口が「固まってみる!」と団子状態でスタンバイ。その中で宮間はその固まりの中にいる阪口の頭にピタリと合わせてゴールが生まれた。

「このパターンはこれからも使える」(阪口)

 得点パターンが新たにひとつ増えた瞬間だった。

 先制点を挙げた川澄に笑顔がなかったように、この日選手たちは大量得点を目標にしていたため、ゴール後にも、気を引き締め表情を崩すことはなかった。そんな中堅選手たちの顔が綻んだのが、宮間がダイビングヘッドで決めた10ゴール目だった。川澄からの絶妙なクロスが中二人を飛ばして奥に走りこんだ宮間へ。

「このチームではなかなかない3人目の動きを見てくれたことがうれしかった」(宮間)

笑顔の訳はようやくチームに芽生えた希望を見つけたことだった。勝利だけではなく、より多くのゴールを必要とする試合はことさら難しい。常に時間に追われ、攻撃は自然にテンポが速くなる。

 柳楽雅幸監督率いるチャイニーズ・タイペイとの第3戦は、日本的組織サッカーを巧みに取り入れたプレスで日本は苦しめられた。(結果3−0)加えて、日本はここにきて人手不足が響いた。

 そもそも今大会の招集メンバーは若手中心。連覇のかかったプレッシャーの中でベテランに頼らず、実際に出場機会を増やすことで、若手の成長を促すための大会と、佐々木則夫監督は位置付けていた。全員が100%以上の力を発揮するだけでなく、若手が期待以上の成長を見せて、初めて連覇が見えるギリギリの選択だ。

 ところが、FW高瀬愛実(INAC神戸)を筆頭に、MF猶本光(浦和レッズ)、菅澤、DF長船加奈(仙台レディース)という、まさに指揮官が今大会で一皮むけてほしいと思う人材がことごとくケガで別メニューを強いられるという事態に陥った。特にFW陣に関してはペアを組み替えながら全員に効果的にチャンスを与えようとしていただけに、大誤算だった。それがそのまま試合に影響を及ぼした。

 スタメンでトップに入ったのはボランチの阪口。苦肉の策だった。それでも、開始3分で有吉佐織がマイナスへ切り替えしたボールに阪口が合わせて得点。チームメイトの力みを消し去るには十分のゴールを決めてみせた。2点目は宮間&阪口のコンビネーションプレイからの川澄のクロスに吉良が合わせるという完璧な崩し。弾きクセのある相手GKのこぼれ球を狙っていた川澄が、余裕のループで決めて3点目。途中、ゴールが認められない不運もあったが、最終的には得失点で中国を上回り、日本は無事に1位通過を果たした。

 若手選手には一応の評価を下しながらも、「物足りない」と佐々木監督は本音を漏らす。各選手についてはその可能性を十分に理解しての招集だ。もちろん、この状況ならこの程度のパフォーマンスはしてくれるだろうという計算がある。監督が求めているのは意外性ではないだろうか。ここまでの戦いで指揮官の予想をいい意味で裏切る選手は出てきていない。得点シーン、そのほとんどの中心が宮間、川澄、阪口といった中堅選手だ。

 今、日の丸をつけている若手選手たちが来年のワールドカップを"明確"に目指しているのなら、現状のパフォーマンスでは生き残れる可能性は少ない。一歩一歩確実に積み上げなければならない戦術と、佐々木監督の言う「大胆なプレイ」とは別物だ。

 中心選手に合わせることだけで精一杯なことも理解できるが、そこからさらにもう一歩も二歩も踏み出した"大胆"なトライが欲しい。彼女たちが張り合うのは常に国際舞台に身を置くヨーロッパ組であり、経験豊富な国内組なのだ。戦術理解で浅くとも、これまでのなでしこにない発想を披露すれば、新たな可能性として指揮官に印象づけることもできる。

 第2戦の爆発力のおかげで1位通過となり、格下の相手が予想される準々決勝。この段階で自信あるプレイが確立できていなければ、格段にレベルアップする準決勝以降の相手に通用するとは思えない。準々決勝までの中3日。過去にないくらいの発奮を期待したい。

早草紀子●文 text by Hayakusa Noriko