旅行会社が提供している商品のひとつに「旅行積立」というものがある。毎月一定のお金を積み立てて、満期が来るとそれまでに積み立てた合計金額に、あらかじめ決められた金額が上乗せされ、旅行券と交換ができたり、旅行代金に充てることができる、というサービスだ。おそらく、デパートが行なっている積立商品をヒントにしたと思われる。

 旅行積立では、上乗せされる金額は、積み立てた金額の2%前後というケースが多い。一見、わずかな利回りだが、銀行の定期預金よりはるかに高いため、お得な金融商品として、これまでマネー誌などでたびたび紹介されてきた。しかし、私個人としては、あまりお得な商品とは考えてこなかった。理由は、利回りの高低ではなく、使途が限られているからだ。提供する会社の旅行券や旅行代金だけというのは、魅力に欠ける。旅行好きならかまわないのでは? という意見もあろうが、旅行会社が提供する通常のツアー商品というのは、往々にして、割安なものは少ない。

 大手旅行会社のツアー商品と同じような内容で、安いツアーを見つけることは、それほど難しいことではないはず。多少、積立金額に上乗せされても、割高な商品を買うことになりかねない……こうした理由から、今まで旅行会社の積立商品にはメリットを感じられなかったのだ。だが、最近、面白い商品を見つけた。JTBの『レジャー年金』である。

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■単純な年利回りとは異なる

 この『レジャー年金』の特徴は、まず、利回りが高いことが挙げられる。積み立て期間中は2.5%、満期後の受取期間には1.0%が上乗せされる。ただし、この利回りは「単利月数計算」というやり方で適用されるので、単純な年利回りとは異なることに注意が必要だ。参考までに、サイトに掲載されている積立シミュレーションを記しておくと、毎月5万円で60か月積み立てた場合、積立合計金額は300万円に対して、上乗せ分が25万625円になる計算だ(※サイト上では、いろんな積立の金額や期間の組み合わせのシミュレーションが可能)。

 また、利用の際にはいくつかの条件がある。積み立てる金額は、ユーザーが設定できるものの、合計で100万円以上になるように設定しなければならない(合計金額の上限は2000万円)。積立回数は12回から60回までで、積み立てたお金は、積み立て期間終了後5年間にわたって年1回だけ受け取ることになっている。例えば、前述の300万円を積み立てるシミュレーションでいうと、5年間で積立が終了し、6年目から10年目まで毎年1回、65万125円を受け取ることになる。つまり、積立期間が60か月(=5年間)にわたると、総額を受け取るまでに10年間かかることになる。まさに“年金”なのである。

 積み立てたお金の使途の広さも大きなメリットだ。JTBのツアー商品以外に、国際線航空券の料金にも充当ができ、さらに、「JTBエンタテインメントチケット」との交換が可能。「JTBエンタテインメントチケット」とは、JTBがチケットぴあと提携して販売する、演劇、音楽、スポーツなどの様々なイベントのチケットのことで、このチケットの代金に充てられるのだ。遠隔地で行きたいイベントがあった場合、チケットから移動や宿泊の手配がワンストップで済み、費用もまるごとレジャー年金で支払うことができることになる。

 自社の旅行券・旅行代金以外の使途が存在する旅行積立として、他に、日本旅行の『ドリームプラン』があることも付け加えておきたい。『ドリームプラン』は、毎月3000円から積み立てが可能な従来型の商品だが、JR券や航空券、私鉄券などの料金にも充当できる。年利回りは、積立期間に応じて変わり、1.5%から2.0%(単利月数計算)と悪くない。

 冒頭で、大手の旅行会社のツアー商品は、格安系の旅行会社のツアーよりも割高な傾向があると述べたが、いろいろな業者のサイトをのぞいてみたところ、業者間の価格競争は厳しさを増しており、大手と格安系の価格差は全般的に縮小している模様。大手のツアーでも、期間と内容次第では十分に格安といえるツアーが増えている。旅行積立商品のお得度は、ここ数年でアップしているといえそうだ。

文/松岡賢治

マネーライター、ファイナンシャルプランナー/シンクタンク、証券会社のリサーチ部門(債券)を経て、96年に独立。生活総合情報サイト「All About(オールアバウト)」のクレジットカード担当。ブログはこちら