アジア大会グループ首位通過の“なでしこジャパン”に課せられたミッションとは

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「物足りなかった」

 佐々木則夫監督はグループリーグ最終戦となる9月22日のチャイニーズ・タイペイ戦後、そんな言葉を漏らした。

「なでしこジャパンの新戦力発掘」というテーマを掲げているアジア大会。3人の初招集選手を含めて若手を大胆起用したグループリーグの3試合だったが、その成果が出たのかと言えば、冒頭の言葉に集約されてしまうのかもしれない。

 もちろん、現在のなでしこジャパンが単純に力のあるチームだということはあるかもしれない。2011年の女子ワールドカップを制したメンバーの存在感と経験値はやはり巨大だ。グループリーグで抜きん出たプレーを見せていたのが誰かと問われれば、「FW兼用ボランチ」として奮戦した阪口夢穂や左右両足から自在なキックを繰り出すレジスタ・宮間あや、あるいは常に安定したクオリティーを発揮していた川澄奈穂美の名前が挙がるだろう。それは素晴らしいことなのだが、一方で日本の女子サッカー界が抱える未来への不安要素ではある。

 今大会の佐々木監督は勝負の部分を彼女たち歴戦の勇士の力に託しつつ、育成目線に近いアプローチで若手を粘り強く起用している。「臼井理恵選手は、ボールを受けたときの攻撃のリズムの作り方、パスの出しどころを観る目、ボールの置きどころ、あるいは切り替えのところに課題がある」なんてコメントに象徴されるように、それぞれに世界チャンピオンを狙うハイレベルなチームに入ってきたからこそ見えてくる課題を認識させつつ、意識の部分での成長を促し続けている。

「彼女はもっと成長できますね。シュートもあるし、仕掛けもある」と評価する19歳の増矢理花にしても、「まだまだ物足りない」という厳しい言葉を欠かさない。恐らく佐々木監督は主力組との間にある差が今大会だけで埋まるとは思っていまい。その上で意識の部分で化ける選手がいるかどうか。肥やしを与えて、時に鍬を突き刺しながら、芽が出るか否かを観察している節がある。

 勝利と育成という二つの目標を両立させつつ、来年の女子ワールドカップに繋げていくこと。アジア大会のなでしこジャパンに課せられたミッションは容易ではないようにも思えるが、世界連覇を狙うチャンピオンチームであれば、当然の課題。その期待に応えて、もう一伸びしてくるタレントが出てくることを期待して、決勝トーナメントの戦いを見守りたい。

文=川端暁彦