九州大学の橋彌和秀准教授・孟憲巍修士学生らによる研究グループは、赤ちゃんは他者が知らないであろうものを指差して教えることを明らかにした。

 他者に対して何かを教えることは、ヒトに特徴的に見られる協力行動の一つであると考えられている。近年の赤ちゃん研究で、1歳半頃から、大人が困った顔をしたり助けを求めたりすれば指差しで場所を教えるなどの援助行動を取ることは分かっていたが、そのような手がかりなしでも一方的に教える行動を取るのかどうかは分かっていなかった。

 今回の研究では、赤ちゃん研究員として登録されている32名の1歳半児とその保護者を対象に実験をおこなった。オモチャを2つ用意し、実験者はそのどちらかのみを使って赤ちゃんと一緒に遊び、その後2つのオモチャを見えるところに置くと、赤ちゃんは遊んでいない方のオモチャを多く指差す傾向が見られた。一方で、どちらのオモチャにも接していない大人に対しては指差しの傾向に偏りはなかった。この実験結果から、赤ちゃんは大人の知らないであろうものを指差しで教えていると考えられる。

 赤ちゃんは、ことばを獲得する前から頻繁に指さしをする。大人はその指さしを様々に解釈するが、一般的には「あれ、取って」など、赤ちゃんの要求を満たすような解釈をすることが多い。それに対して、今回の研究は、赤ちゃんの指さしには相手に自発的に「教えよう」とする心理的な背景が存在する場合があること、さらにその基盤として、他社の知識や注意の状態に関する一定程度以上の認識を備えていることを初めて明らかにした。

 今後は、さらに研究を進めることで、ヒト独自のコミュニケーションが切り開いた文化・社会の起源解明に役立つと期待されている。

 なお、この内容は「PLOS ONE」に掲載された。