アジア大会中継に不安を隠し切れないTBSが「石油の国のゴルゴ13」など、得意の面白キャッチコピー作戦を開始した件。
本人にバレなきゃいいだろ、というTBSの熱い気持ち!

テレビ局が…と言うと語弊がありますので名指ししちゃいますが、TBSがスポーツ選手につけるチンクシャなキャッチコピーについて、みなさんはどう思われていますでしょうか。良識ある大半の方は「ふざけてる。けしからん」とお思いでしょうか。まぁそうなんでしょう。世界陸上では日本陸連から止めてくれ的な申し入れがあったという報道も出ていましたし。TBSもすっかり萎縮したのでしょうか、最近はトンとあの手のヤツも沈静化していたように感じます。

根本裕一という名前は覚えていなくても「美白のロベカル」は覚えている。「モザンビークの筋肉聖母」というフレーズから逆算してマリア・ムトラを思い出す。「ハードルなぎ倒し男」というフレーズのおかげで一目でアレン・ジョンソンを見分けられる。幾多の伝説を残してきたTBSのキャッチコピー魂。「ないよりはいいだろ?」「肩のチカラ抜けよ」「ホントに強い選手はこんな言葉遊びの影響なんか受けないから」と心の奥のやらかい場所に何度も何度も問い掛けてくるこの感じ。僕は決して嫌いではありません。それだけに最近の猫、じゃなくて黒豚を被ったおとなしい態度には不満を覚えていたものです。

しかし、TBSに宿る熱い魂は死んでいなかった。

19日から韓国・仁川で開幕したアジア大会。世界一でも何でもなく、アジア一を決める大会という微妙なグレードダウン感がTBSを不安にさせたのでしょう。いくらコンテンツ不足の昨今とは言え、アジア一で本当に商売になるのだろうかと考えさせたのでしょう。レスリングも柔道もついこないだ世界選手権やったばっかりだし、競泳もパンパシやったばっかりだし、テニスなんか錦織がホンモノの頂上決戦を見せたばっかりだし、めっちゃ出涸らし感ありゃせんだろうかと震えさせたのでしょう。

そして、目覚めたのです。熱きキャッチコピー魂が。このアジア大会、TBS中継は「アジア40億人の星」と題し、知らない選手に面白キャッチコピーをつける仕事を再開してくれたのです。おお、いいじゃないか。これを待っていたぞ。「不安だな」から「よしやろう」までの、電光石火のこの早さ。●●●●●&●●●●の●●●●さんでさえ、これだけのスピードで不安解消のためにヤーヤーヤーを再開したりはしないでしょう。さすがTBS、常に片手に注射器型エンピツを持ちながら、不安になるのを待っていたかのようではありませんか。

しかも今回は過去の教訓を活かして、慎重に事を運んでいます。これまでは日本のエースとか、中継で注目する有名人でコレをやってしまっていたことが問題でした。みんなが見るから、たくさん非難もされるという悪循環に陥っていたのです。しかし、今回は斬新にも「中継もしないし世間もどうせ気にしてないだろう競技のよく知らない選手」に的を絞り、言い逃げするという手法を編み出したのです。キャッチコピー言う⇒ダイジェスト流す⇒サヨウナラというピンポンダッシュみたいなやり口で。

一流選手さえちゃんと紹介しておけば視聴者からの文句は来ないだろうという強かな計算は、我が家の茶の間からも「やるな黒豚!」「いいぞ黒豚!」「この黒豚野郎!」と大絶賛を集めています。そのやり口を含め、僕は決して嫌いではありません。一瞬しか出てこないのでチェックするのは大変ですが、世間の数少ないキャッチコピーファンの皆さんにも、頑張ってチェックしてもらいたいものですね。

ということで、今後の大会視聴の楽しみのひとつとしてもらうべく、TBSによる2014年アジア大会中継から「アジア40億人の星FILE」をチェックしていきましょう。

◆見た目、出身地、似てるモノを中心に攻めろ!多少違っていてもいい!

選手キャッチコピーの基本線というのは、特徴的な部分を言うこと。その選手の長所や、独特なプレースタイル。あるいはバックボーンとなるプロフィールなどを盛り込んでいく。似たような選手が数多く集う中で、そのトピックを知っておけば観戦が楽しくなるようなコピーが望まれるものでしょう。

「スリー・タイムス・チャンピオン」とかは一目瞭然ですよね。3回もチャンピオンになっている選手は大層スゴイでしょうから見逃せません。「世界一美しい飛形」とかもアリでしょう。とにかくフォームが素晴らしいんだなと、そこに注目しようとなりますから。ただ、そんなわかりやすく適切なトピックなどなかなかありません。

いや、逆に言えば、そういうのがあるならキャッチコピーなどいらないのです。その事実を映像と共に淡々と言えば、スゴイことは伝わるのです。問題は「伝わらん」タイプの選手。「あえて言えば」の特徴をこねくり回しながら、何か盛っていかないと差別化できないとき、ついついヘンなものを盛ってしまう。「頑張った結果、こうなっちゃった」という意味で、TBSさんは決して責められないのであります。

↓今回は「TBSテレビ60周年記念企画」ということで目一杯煽っていく所存です!


これは頑張らざるを得ない!

開局60周年という、そこそこの節目だからな!

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中継中にも、もちろん煽りは挿入されます。男子サッカーでは鈴木武蔵さんに「ジャマイカ生まれの侍」とか軽めのキャッチコピーをつけていますから。ただし、それはTBSさんの本気ではありません。「キケンなアフリカン」「ドミニカンスーパーマン」「弾丸ママはパリジェンヌ」などの歴代の地域煽りに比べるとマイルド風味なのはチカラを抑えているから。ここで本気出すと、抗議の電話が来るかもしれないからです。

しかし、知らない競技の知らない選手なら大丈夫。本人は抗議するほど暇ではありませんし、関係者も応援でそれどころではないでしょう。義憤に駆られる一般人が出ないくらい遠いところからピックアップすれば、問題は起こらない。それがTBSアジア大会の本気「アジア40億人の星FILE」なのです!

↓アジア40億人の星FILE001:ジーコが認めたイラクのエース
<FILE001:アムジェド・カレフ・アル・ムンタフィク(イラク/サッカー男子)>


<TBSによる紹介内容>
・2011年から2012年にかけて代表監督をつとめたジーコが才能を見出す
・1月のU-22日本戦でも守備網を切り裂いてゴール
・U-22アジアカップでMVPを獲得した
・「イラクの星がアジア40億人の頂点を目指す!」

日本ではまったく無名というか興味がないだろうという読み。日本VSイラク戦はNHKBSが中継するということで、キャッチコピーを試合中継で使用する機会はないという冷静な判断。「ジーコ入れときゃええやろ」という絶妙な手抜き具合。一発目としてはまだまだマイルドなものの、ジーコが認めてるかどうか一切検証の跡がないあたりを含め、スタッフの適当感はジンワリ伝わってくる。

↓アジア40億人の星FILE002:大国インド×島国モルディブ
<FILE002:サッカー女子 モルディブ代表>

<TBSによる紹介内容>
・モルディブはアジア大会初出場
・人口33万人8000人、面積は日本の1%未満の小国
・女子サッカーの代表は2003年に結成されたばかり
・大国インドとの歴史的開幕戦に臨む

こちら、正確に言うと「FILE002」ではありません。ていうか、これまでの中継を何度見返しても「FILE002」が見つからないのです。001と003の間はなでしこJAPANの初戦の中継だけなので、その中でソレっぽいのはここしかなかったので、暫定的にFILE002としておきます。本物の002をご存じの方、ぜひお知らせください。

↓アジア40億人の星FILE003&004:美女キャプテン対決
<FILE003:ステファニー・アルナバー(ヨルダン/サッカー女子)>

<TBSによる紹介内容>
・チームではキャプテンをつとめる
・本人からの「チームは以前と比べて戦術的にも精神的にも変わった。今大会でさらに成長したい」というコメント
・何と言ってもこの美貌
・「ヨルダンの国民的ヒロインだ!」

<FILE004:リン・マンテイ(台湾/サッカー女子)>


<TBSによる紹介内容>

・守備の要としてチームを牽引
・日本のクラブチームも注目するほどの実力
・そして何と言ってもこの美しさ
・「まさに台湾のアイドル!」

選手としての特徴は「キャプテンです」程度で片づけ、「とにかく美人」と言いまくる紹介術。そして確かに美人。「アスリートを色目で見て!」とご立腹する人のために用意したかのような色目100%の煽りは、炎上商法という言葉がよく似合う。

↓アジア40億人の星FILE005&006:セレブ対決「IT大国インド」VS「石油大国UAE」
<FILE005:サッカー男子 インド代表>

<TBSによる紹介内容>
・アジア大会1951、1962金メダルの古豪
・インドは近年のITブームでウハウハ
・その豊富な資金力でサッカーの一大プロジェクト「スーパーリーグ」を発足
・ジーコを始め世界中からレジェンドを招集
・国内リーグはもちろん、代表チームの強化を図っている

<FILE006:サッカー男子 UAE代表>

<TBSによる紹介内容>
・アジア大会2010銀メダルの西アジアを代表する強豪
・その原動力は世界有数のオイルマネー
・国内リーグの首脳には王族がズラリ
・潤沢な資金を使い放題
・あのマラドーナを13億円で監督に招いたことも
・「オイルマネーかそれともITマネーか!?」

金VS金。ジーコを呼んだ金とマラドーナを呼んだ金、どっちの金が強いのかという金満対決煽り。もはやサッカーの内容には微塵も関心がなく、相手の財布を値踏みしていこうという姿勢には一本ピシッと通った筋を感じる。試合はもちろんUAEが圧勝した。

↓アジア40億人の星FILE007:日本サッカーを知り尽くす男
<FILE007:リ・ヨンジク(北朝鮮/サッカー男子)>

<TBSによる紹介内容>
・J1徳島ヴォルティス所属
・日本のサッカーを知り尽くす男
・髪型もジャパニーズスタイルでスタイリッシュ
・「オシャレな北朝鮮の星に注目だ!」

Jリーグに所属している=日本サッカーを知り尽くすという飛躍。スカウティングの担当者でもあるまいし、日本人選手も含め「日本サッカーを知り尽くしている現役選手」はいないように思われるが、TBSが言うのだから多分知り尽くしているのだろう。そして、日本を知っている以外の情報は髪型オンリーという飛躍。これで「リ・ヨンジクのことを知り尽くした」状態になれるのか、若干の不安を覚える。なお、本大会では国の指導なのか、髪型は北朝鮮風横分けにピッチリと決めてきた模様。髪型の情報、いらんかった。

↓アジア40億人の星FILE008:タイ代表にリオネル・メッシがいた!?
<FILE008:チャナティプ・ソングラシン(タイ/サッカー男子)>

<TBSによる紹介内容>
・身長は1メートル58センチとかなり小柄
・だが、そのプレースタイルはメッシの香りを漂わせる
・「タイのメッシが母国に勝利の微笑みを!」

小さいということ、メッシっぽいということ、この2点だけで「伝わりましたかね?」とドヤ顔をされても困惑せざるを得ないショートカットぶり。実際にメッシっぽいことでタイ国内で大きな期待を集めているらしいことや、清水エスパルスの練習に参加した経験があることなどは特に紹介するつもりはない。「小さい=とりあえずメッシ」という鉄板の煽り、定義を妙に厳しくしたりすれば自分の首を絞めるだけだから。小さいサッカー選手は、全員メッシだ!

↓アジア40億人の星FILE009:なにわのジャッキー・チェン アジア制覇へ
<FILE009:市来崎大祐(日本/武術男子長拳)>

<TBSによる紹介内容>
・アクションスター、ジャッキー・チェンに憧れ武術を究めた
・武術の中でもダイナミックで華麗な動きの長拳を得意とする
・前回大会では銀メダルを獲得
・「いよいよアジアの頂点へ!」

「なにわのジャッキー・チェン」という古き良きTBSの香り漂うキャッチコピー。「なにわのモーツァルト」ことキダ・タロー氏を彷彿とさせるものがある。「前回大会銀」とか一切のキャリアを無視して原点までさかのぼる姿勢は、生まれた土地と競技を始める理由まで慎重に吟味しないと、TBSキャッチコピー地獄からは逃れられないことを雄弁に物語る。もし出身地が横浜で、武術を始めたきっかけがサモ・ハン・キンポーへの憧れだったら、確実に「横浜のサモ・ハン・キンポー」になっていたはず。もはや中華饅屋のオヤジにしか見えない。なお、今大会では銅メダルを獲得。ひっそりと日本人メダリスト第一号になった。

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↓アジア40億人の星FILE010:世界記録を塗り替え初代女王に!!

<FILE010:コン・キンケツ(中国/自転車チームスプリント女子)>

<TBSによる紹介内容>
・傾斜45度のバンクを時速60キロで走り抜けるスピード競技
・2年前のロンドン五輪、コン選手率いる中国チームは準決勝で世界記録を更新
・「中国に死角なし!世界記録で金メダルなるか!」

チームで戦う種目なのに、ひとりをピックアップするという違和感。しかし、その違和感は「サッカーとか球技では当たり前やん」という黒豚の声でかき消される。うーん、消えないけど消さざるを得ない。3人組チームのうち1人だけを紹介するという絶妙なサボリ感だけでなく、「ロンドン五輪では決勝も先着するが競技後に降格の審判が下る」という重要な情報をカットしたため、リアル世界一なのかどうかうやむやになっている感も微笑ましい。リアル世界一なので、もちろん今大会では貫録の金メダルを獲得した。多分、黒豚が「コン!」「キン!」「ケツ!」と言いたかっただけのセレクト。

↓アジア40億人の星FILE011:体重の3倍を持ち上げる豪傑
<FILE011:オム・ユンチョル(北朝鮮/ウェイトリフティング男子56キロ級)>

<TBSによる紹介内容>
・北朝鮮は国を挙げてウェイトリフティング選手を育成してきた
・アジア人として初めて、自分の体重の3倍のバーベルを持ち上げた
・ロンドン五輪では金メダルを獲得
・「北朝鮮の星オム・ユンチョル 世界記録なるか!?」

「スクランブル交差点を三歩で渡る男」的な名文句。写真だけ見ると「角刈り怪力男」とか、もっと安直な方向にいきたくなる素材を、いかにも凄そうな感じで紹介してみせた。体重のウン倍を持ち上げたりする動物なんてアリとかカブトムシくらいしか思いつかないくらいスゴイ。実際、オム選手はアジア大会で体重の3倍を超えるウェイトを持ち上げ、世界新記録で金メダル獲得。お見事。


↓アジア40億人の星FILE012:無敵の女王の挑戦

<FILE012:山口啓子(日本/武術女子剣術・槍術総合)>

<TBSによる紹介内容>
・全日本選手権8連覇中
・本人からの「武術太極拳の発展のためにも金メダルを獲ります」というコメント
・「武術太極拳の星がアジアの頂へ!」

アジア40億人の星だって言ってるのに、自分で「武術太極拳の星」と言い直しちゃうテキトーさ。「無敵の女王」なのに挑戦しちゃう微妙なチグハグ感。これを「日本では無敵の女王が、アジアの星に挑戦」と言い直すと、まったく興味がわかないから不思議だ。なお、アジア大会では6位という結果だったとのことで、惜しくも星になれず。

↓アジア40億人の星FILE013:石油の国のゴルゴ13
<FILE013:フェハイド・ディハニ(クウェート/クレー射撃男子)>

<TBSによる紹介内容>
・ロンドン五輪ではクウェート選手団の旗手もつとめた国民的英雄
・クウェート史上初の五輪メダリスト
・「今回の標的はアジアの頂点!」

「13番目だからゴルゴ13がいいな」という結論ありきの安直思考。射撃を紹介する予定も需要も特にない中で、ゴルゴ13と言いたいがためだけにクウェートのオッサンを引っ張りだしてくるあたり、もはや手段と目的が逆転していることは確実。その勢いの前には「ゴルゴ13って殺し屋だけど大丈夫か?」「どっちかと言えばゴルゴに撃たれる側では?」「何やかんやで油田爆破しそう」という心配など何の意味も持たない。

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いかがでしたでしょうか。今大会のTBSのやる気具合は。序盤の様子見から中盤にかけてジャッキー・チェンで加速し、そしてゴルゴ。視聴者が過敏に反応しないことを悟ったか、だんだん本領を発揮してきました。この勢いでドンドン知らない選手を紹介してほしいもの。「マジで!?」と思わせてくれたら、コチラもちゃんと調べる気力がわきあがりますからね。水球選手に「ポロリ覚悟の絶対エース」とか、ソフトテニス選手に「ソフトニシコリ」とか、レスリング選手に「夢見る乙女ミラクル★サオリン」とかワクワクするヤツをお願いしたいものです。僕は決して嫌いではありませんので。


TBSさん!放送からFILEを探すの大変なのでサイトでまとめてください!