ネパール戦でようやく決定的な仕事を見せた野津田。決勝トーナメントでのさらなる爆発を期待したい。(C) SOCCER DIGEST

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 決勝トーナメント進出を懸けて、グループステージ最後のネパール戦に臨んだ日本は、序盤から圧倒的にポゼッションで優位に立ち、試合の主導権を握った。CFの鈴木武蔵を起点に、2列目の矢島慎也や中島翔哉が有機的に絡み、ボランチの遠藤航もポジションを高めに取って攻撃に厚みを加えていく。
 
 そうした流れのなか、2列目の右サイドで先発した野津田岳人の存在感はどこか希薄だった。オフ・ザ・ボールの動きや組み立ての部分では貢献していたかもしれないが、試合開始からしばらくは、チャンスの場面に顔を出せずにいた。
 
 一方、ほとんどの時間帯でボールを握っていた日本だったが、人数を割いてゴール前を固めるネパールの守備に手を焼いて、なかなか決定機を作り出せない。相手の粘り強い対応の前にパスワークのリズムは狂わされ、効果的な縦パスも入らず、両サイドを使った幅のある攻撃もクロスの精度を欠くなど、いたずらに時計の針を進めるだけだった。
 
 そんな状況に終止符を打ったのが、野津田の左足だった。
 
 ゴールに向かって正面、ペナルティアークから少し離れた位置でパスを受けると、迷わずに自慢の左足を思い切り振り抜く。放たれたボールは勢いよくバーを叩いて、ゴールに吸い込まれた。
 
 韓国に飛び立つ前の直前キャンプで、大会への意気込みを聞かれた野津田は次のように答えていた。
「やっぱりゴール。決めるだけでなくて、ゴールに絡むプレーをどんどん増やしていきたいし、結果に絡めるような活躍ができればいい」
 
 このネパール戦を迎えるまでに、野津田は得点はおろか、アシストさえ記録できていなかった。本人にとってはフラストレーションが溜まる日々だっただろう。そんなモヤモヤを吹き飛ばすような豪快な一撃を振り返り、「今までの試合でもチャンスはあったけど、決められなかった。やっと1点取れて良かった」と安堵の表情を見せた。
 
 日本はその後、後半に入って、中島、鈴木が加点。3-0で迎えた70分、野津田は狙いすましたクロスで鈴木のこの日2点目のゴールをお膳立てするなど、1得点・1アシストの大活躍で勝利に貢献。この結果、日本は勝点6でグループ2位となり、16強入りを決めた。
 
 左利きでポジションは右サイド。無回転シュートも得意となれば、「本田圭佑」を引き合いに出さないほうがおかしい。そのことをぶつけてみると、本人もやはり日本代表の4番を意識しているようだ。
「本田選手も右でやっていることが多いですし、よくプレーを見ます。学ぶことはたくさんあって、どういう風にボールを受けているのか、どのタイミングで中に入っていくのか、といったところは意識して見ています」
 
 イタリアの名門ミランで結果を求めて戦う本田のように、野津田もこの大会では先述の言葉通り、ゴールという結果にこだわっている。そこにはあるひとつの使命感があった。
 
 今夏、地元の広島で多くの犠牲者を出した土砂災害が起きた。「悲しい気持ちがすごく大きかった」と心境を明かした野津田は、さらにこう続ける。
「自分たちが試合で全力を尽くして、サッカーを通じて少しでも元気づけたい。今回、被害に遭われてしまった方たちのためにも、という想いは当然、ありますし、自分たちが活躍することで、元気を与えられれば」
 
 所属するサンフレッチェ広島の森保一監督からは「優勝してこいよ」と送り出されてきた。連覇まであと4つ。ようやくゴールという結果を出せた。
「これから勢いに乗っていけるかなと思います」
 
 頂点を目指す野津田の戦いは、まだ終わらない。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)

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