失点に二度絡んでしまった室屋。しかし、グループリーグ突破へ落ち込んでいる暇はない。(C) SOCCER DIGEST

写真拡大

 試合後のミックスゾーンで、手倉森誠監督は独特の表現で最初の失点を振り返った。
「クリアっていうのは、頭の中が『クリア』でなければいけない」
 
 当の本人も、そのことは十分に理解しているようだ。
「クロスが飛んできた方向に返すのか、前にクリアするのか迷って、ちょっと中途半端になってしまった。結果的に、外に大きく出しておいたほうが良かった」
 
 12分、左サイドから放り込まれたクロスを、室屋成は戻りながらの難しい態勢でクリアするも完璧にミートできず、力なくこぼれたボールは中央にいたファラジにとって絶好球となり、ダイレクトで豪快に決められてしまった。
 
 グループリーグ第2戦のイラクとの大一番で、日本は序盤にいきなり失点を許してしまう。強さと速さで上回る難敵を相手に厳しい戦いを余儀なくされたが、それでも大島僚太や中島翔哉、原川力らテクニカルな選手たちは狭いスペースでも強気につなごうとする姿勢を見せ、イラクの先制点にも怯まずに攻撃を組み立てていた。
 
 そして36分、岩波拓也の縦パスを矢島慎也がフリックで中央に流すと、DFとの競り合いを制した中島が抜け出し、冷静にGKとの1対1を制して試合を振り出しに戻してみせる。
 
迎えた後半、逆転を狙う日本だったが、またしても「ミス」からゴールを割られる。左サイドからのクロスめがけて走り込んできたカリムを捕まえ切れずに、鮮やかなボレーを叩き込まれた。
 
カリムのマークについていたのは、室屋だった。
「ちょっとボールウォッチャーになってしまった。ちゃんと準備していれば、普通に回避できたプレーだった。あそこも個人的にはミスだったと思う」
 
 日本はその後、カリムの強烈なFKを浴びて1-3と苦しい状況に追い込まれる。ただ、2点のビハインドを負う展開のなかでも、岩波が「いろんなチャンスを作れたことはプラスに捉えたい」と語るように、いくつもの決定機を築き、相手ゴールに迫った。
 
 室屋も日本に流れを引き寄せるアグレッシブなプレーを再三繰り出した。ふたつの失点に絡んでしまったものの、気落ちせずに何度も果敢な突破を見せた。
「攻撃のところ、特に後半は、個人としてもチームとしても、自分たちのサッカーができていた。縦に仕掛けてクロスを上げる場面だったり、そういう部分はできたと思う」
 
 手応えがなかったわけではない。しかし、自らの失態も認めざるを得ない。今大会のメンバーで唯一の大学生は、「こういう経験は久しぶりというか、自分の責任で負けたと思っている」と悔しさを噛み締めていた。
 
 ただし深く自省はしても、ここで立ち止まるわけにはいかない。この世代の因縁の相手に敗れ、グループリーグ突破は最終戦へと持ち込まれた。だからこそ顔を上げて、前に進むための一歩を力強く踏み出そうとしている。
「グループリーグは次もあるので、落ち込んではいられない。勝ち上がっていけば、イラクとまた当たると思う。そこでしっかりと借りを返したい」
 
 今大会に臨むにあたり、室屋は「(このチームに)残れるか残れないかの最後のチャンスだと捉えている。だから絶対に結果を残して、テグさん(手倉森監督)の信頼を勝ち取りたい」と意気込みを語っていた。幸いにも、U-21日本代表の指揮官は、「負ける経験も必要」という考えの持ち主であり、失敗や敗戦をポジティブに受け止めることができ、そこからの挽回力も楽しみに待つ男である。
 
 このまま終わるわけにはいかない。苦い経験をバネに、さらなる成長を期待したい。
 
取材・文:広島由寛(週刊サッカーダイジェスト)

【日本U-21代表 アジア大会日程・結果】
9月14日(日)クウェート/4-1
9月17日(水)イラク戦/1-3
9月21日(日)ネパール戦
9月25日(木)or27日(金)ラウンド16
9月28日(日)準々決勝
9月30日(火)準決勝
10月2日(木)決勝/3位決定戦