アギーレ監督を迎えた新生日本代表の初陣となった2連戦は、ウルグアイ戦(5日、札幌)が0−2、ベネズエラ戦が2−2(9日、横浜)と、未勝利に終わった。

監督が代わったからといって、急にチーム力が上がるわけではない。ましてアギーレ監督は、まだ日本の各選手の特徴を把握しきれていない。本職がセンターバックの森重を中盤の底に起用したり、同じく本職がFWの田中を中盤に起用したり、その采配にはチグハグさもあった。だから、この2試合だけを見て、あれこれ評価するのは難しい。

ただ、新しく入った選手たちからは、アピールしてやろうという気持ちが伝わってきた。特に、ベネズエラ戦でゴールを決めたFW武藤とMF柴崎には可能性を感じたね。

武藤はとにかく元気。ボールを持ったら自分の武器のスピードを生かしてどんどん仕掛けていたし、守備時の激しさもあった。ボールを持っていないときの動きにムダが多いなど、まだまだ粗削りだけど、なるほど、勢いに乗っている選手だなと思ったよ。今後の課題は、スピードをより生かすための動きの質の改善。それ次第で大化けするかもしれないし、伸び悩むかもしれない。本人の意識はもちろん、アギーレ監督がどう指導していくのか、期待して見守りたい。

柴崎は今後の日本代表の中心になる可能性を十分に持った選手。常に顔を上げて視野を確保できているから、幅広い展開ができて、シュートの技術もある。決定力はブラジルW杯メンバーの遠藤よりも上だ。フル出場したベネズエラ戦も前半こそミスが多かったけど、決定機につながったクサビのパスや、長い距離を走ってゴールを決めるなど見せ場をつくった。

もっとも、今回は中盤で一緒にプレーしたのが森重と細貝という“守備専門”のふたりだったから、せっかくいいタイミングで攻め上がってもボールが出てこなかったり、本人は難しさも感じたはず。所属の鹿島では、ベテランの小笠原がうまくサポートしているから、もっと攻撃面で良さを発揮できている。今回の代表メンバーなら、森岡と扇原と組ませたほうがよりスムーズにプレーできたかもしれないね。

僕は彼を高校時代から見ているけど、体はたくましくなったし、インタビューの受け答えもしっかりしている。22歳でまだ成長の余地もある。期待していいんじゃないかな。

活躍した新顔ふたりとは対照的に、心配になったのはブラジルW杯組だ。本田は動きにキレがなかったし、長友も積極的な攻撃参加は影を潜め、柿谷も大迫もチャンスはあったのに結果を残せなかった。川島も致命的なキャッチミスをした。

監督が代わればレギュラーは白紙。ザッケローニ時代のような“不動のレギュラー”はいない。そのことを肝に銘じて、また所属クラブで頑張らなければいけないよ。

10月のジャマイカ戦(10日、新潟)、ブラジル戦(14日、シンガポール)の2連戦では、誰が生き残って、誰が外されるのか。そして、新しく試される選手は誰か。個人的には、ぜひG大阪の宇佐美を試してほしい。コンスタントに点を取っているし、現時点では武藤よりも上だろう。

来年1月にはアジア杯(オーストラリア)が控えている。選手たちの猛アピールを期待したいね。

(構成/渡辺達也)