相続でモメ事が最も起こりやすいのは、相続財産が親名義の一戸建てだけで、それを複数の子どもたちが相続するというケース。一戸建ては現金のように簡単に分割できないことや、親と住んでいた人がいれば売却も難しいためです。それでも何かしらの方法で分けなければならないのが相続。兄弟姉妹は親の財産を等しく相続する権利があるだけに、トラブルにもなりやすいのです。第4回では、そんな一戸建てをめぐっての遺産争いを例に、遺産分割の方法や解決策を考えていきます。

いちばんモメるのが、遺産に「一戸建て」がある場合

 親からの遺産は「土地付き一戸建て」の住宅、という人は多いと思いますが、実はこれが、「遺産がそんなにない」場合において、遺産分けでモメる原因のナンバー1と言えます。具体的には、親から相続する財産は、土地付き一戸建て住宅のみで、預金はほとんどなし、というケースです。

 この一戸建てを複数の子どもたちが相続したいと主張した場合、なかなか解決策が見つからず、話し合いにも時間がかかり、さらに税金面でも損をしてしまう……というような相続トラブルの中でも一番やっかいなケースに発展することが多いのです。一戸建てもバースデーケーキのように仲良く取り分けられればいいのですが、それはできません。

 戦前の法律には、家は長男が継ぐものという家長制度がありましたが、現在は親の財産を子どもたちが等しく相続する権利が認められています。代表して家を相続した人は、兄弟姉妹にいくらかの代償金を支払う義務がありますが、それでも家を継ぐのが当たり前という昔からの考え方が残っているためにトラブルになってしまう人たちもいるのです。

 遺産が一戸建てだけでも、親の亡き後に住む人がいない家なら、単純に売却してそのお金を相続人で分ければ済みます。
 しかし親と同居していた人がいる場合は、簡単に売却・処分するわけにもいきません。

 相続人の間で、今住んでいる家に引き続き住みたいという言い分と、家を売ってお金が欲しいという言い分と、意見の対立が起こります。

 そこで売却する以外にどういう形で遺産分割できるのかを考えなければなりません。

 相続税の住宅に関する制度のひとつに、「居住用の小規模宅地の特例」があります。

 これはどういうものかというと、亡くなった人の家に同居していた配偶者や親族が引き続き住む場合、宅地の330平方メートルまで(平成26年中は240平方メートルまで)相続税評価額を80%減額できる制度で、名義人が亡くなった後に高い税金が発生して住めなくなるのを防ぐ目的があります。たとえば5000万円の評価がある土地付き一戸建てが、1000万円の価値として計算されるため、相続の控除内となり、税金を支払わなくてよくなるわけです。

 ただし、10ヵ月以内に相続税の申告を済ませなければ適用されません。親の家を相続する際は、普通に考えればこの特例を活用した方が得であるのは明らかです。でもそうスムーズにいかないのが遺産分割。なかなか折り合いがつかず、話し合いが長引くと、せっかくの特例を使いたくても使えなくなってしまいます。残念ながら、期限までに折り合いがつかず、多額の相続税を支払うことになったケースも少なくないのです。

親の自宅を誰が相続するか、親が決めておく

 一戸建ての遺産分割は難しいうえに、第2回で取り上げたように介護の苦労が絡んでくるとなおさらトラブルになりがちです。
 よくある例としては、親と同居し長年介護をしてきた兄と、一切ノータッチだった弟の2人が相続する場合です。

 兄としては、今住んでいる自宅を手放す気はありません。「長年世話をしてきたのだし、金銭面でも面倒をみてきたのだから、自分が家を相続してもいいだろう」と思っています。

 一方、弟は「家を売却して、そのお金を分けたい」と、自分の相続分を主張します。兄が介護していたことに関しては、同居していたのだから親の面倒をみるのは当然だという考えです。親が亡くなったのだから、家を売却してもいいはずだと承諾しません。

 兄はそんな弟の考えに、「介護が大変なときでさえ協力しなかったのに、こういうときはしっかりもらう気でいる」と腹を立てます。

 こうして、お互いの意見を受け入れられず仲違いしてしまうのです。昔から何でも相談し合ってきた仲でも、円滑に話し合えなくなってしまうのが相続の難しいところです。

 こうならないためには、やはり親が生きている間に遺言などで、きちんと意思を伝えておくことが肝心です。親から、遺産分割の割合を言われれば、内心は不服だったとしても、大きなトラブルにはなりにくいからです。今まで見てきたケースでも、兄弟同士だとお互いになかなか譲らずに大きな問題になってしまうことが多いのですが、親からの申し渡しに関しては受け入れる子どもが多いように思えます。

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