昆虫をも中毒にさせる「コーヒーのゲノム」の秘密

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コーヒーは、他の植物と比べてアルカロイドとフラボノイドが多く含まれている。さらにそのカフェインは、茶やカカオとは異なる、独自の起源をもつのだという。

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コーヒーは、お茶やチョコレートとは完全に無関係に、独自にカフェインを発達させたことが、9月5日に「サイエンス」で発表された研究から判明した。

この研究は、ロブスタコーヒーノキ(Coffea canephora)のゲノムを発表するもので、ENEA(Ente per le Nuove Tecnologie, l’Energia e l’Ambiente:新技術・エネルギー・環境機関)やトリエステ大学が協力した国際的な研究の成果だ(データは専用のサイトで参照することができる)。

コーヒー市場は膨大なもので、カップ(あるいはイタリアン・スタイルにデミタスカップ)20億杯分のコーヒーが毎日消費され、約900万トンが2013年に生産された。約2,600万人を雇用し、世界の約50カ国の経済を支える規模になっている。

なかでもロブスタコーヒーは、世界の生産の約30%に相当し、アラビアコーヒーとともに、商業的に最も重要なコーヒーの種に含まれる。その遺伝的な秘密を解明することで、生産性を向上させたり新しい品種をつくり出したりするほか、環境ストレスへの耐性を強化するのに役立つ。

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ENEAのチームのコーディネーター、ジョヴァンニ・ジュリアーノは、次のように説明する。

コーヒーのゲノムはどちらかというと“単純”で、種子植物の25%が含まれるすべてのキク類の、仮定されている共通の祖先のものと似ています。約2万7,000の遺伝子をもっていますが、これに対して進化的にコーヒーに近いトマトやジャガイモでは3万5,000です。後者において、ゲノムは約7000万年前に3倍化しました。コーヒーでは、3倍化がなかったにもかかわらず、カフェインを合成するもののようないくつかの特定の遺伝子が2倍化しており、元々の染色体上に留まっているか、もしくはさまざまな染色体上に移りました。そしてその後、この物質の合成に特化しました。他の種におけるこのような2倍化の出来事の研究により、わたしたちは、カフェインは、植物の進化のなかで、1回以上“発明”されたと結論づけることができました」

この植物がなぜこれほど独特なものにしているかを解明するために、科学者たちは、カフェインの生成に関係する酵素を、カカオや茶の同様の酵素と比較することも行った。そのなかで研究者たちは、大きな違いを発見して、コーヒーにおいてカフェインの生成が独自に進化したものだと結論づけた。

カフェインが自然のなかでどのような機能をもつかは謎のままだ。害をなす昆虫類や、競合する植物の成長を妨げるのに役立つのかもしれない。確かなのは、中毒になるのはわたしたち人類が唯一の存在ではないということだ。ジュリアーノもこう結んでいる。

「ある最近の研究では、花粉を運ぶ虫たちは、『もうひとすすりネクタル(霊酒)を飲む』ために、より頻繁にカフェインの豊富な花に戻ってくることを示しています」

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